同じネット通販でも、独自のビジネスモデルで業績を拡大している企業も少なくない。
例えば、服飾中心のソーシャル通販サイト「BUYMA」(バイマ)を運営するエニグモ。東証マザーズ市場に上場する同社は、通販の会員を集める一方で、海外に居住している個人をバイヤーとして登録し、消費者とマッチングするビジネスモデルを確立。これには、会社側が在庫を抱えることがないなどのメリットがある。
現在会員数は170万人、世界75カ国に在住する約5万人のバイヤーを抱える。売り手、買い手双方から手数料を得るビジネスモデルで、購入者はバイヤーに注文し、バイヤーが買い付けて発送、商品が届いたら報告・決済する。商品到着後に決済確定する「あんしん後払い決済システム」を導入している。気に入ったバッグを選ぶと、それに合った宝飾品や洋服など、同じバイヤーの製品を選ぶ確率が高いという。「自分のセンスに近いバイヤーは、専属のコーディネーターのようになることで、固定客になるケースが多い」(同社)という。洋服やバッグなど約300万点を扱っている。
同社はスマートフォン(スマホ)の普及が追い風になり、業績が拡大期を迎えている。2014年1月期は売上高18億2300万円(前年比27%増)、営業利益は8億5200万円(同43%増)となった。円安のデメリットを品揃えの強化や顧客の不安を取り除くあんしん補償制度の拡充で打ち消し、新規開拓が進んでいる。補償制度は破損や紛失、非正規品(偽物)購入などに対応している。
今年2月からはiPhone版アプリ「BUYMA」の提供を開始。自分の好みの商品一覧や、最新トレンドアイテムがひと目でわかるチャネル機能を搭載している。15年1月期は売上高23億7900万円(前期比31%増)、営業利益10億円(同17%増)、1株利益150円を計画している。
同社は日本で成功したビジネスモデルを、韓国や米国にも移植していく。韓国ではまず日本製品の紹介を行うという。3年後の営業利益30億円、5年後には50億円を目指している。
●ZOZOTOWNも好調
一方、アパレル専門のネット通販「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイは、物流センターまでを自前で保有する。倉庫業務などを社員が手がけることで、洋服の生地の質感や、縫製の手法などを学び、良い商品を顧客に提供することが可能になる。こちらも14年3月期は大幅な営業増益になったもようだ。
洋服のほか家電や家具などの総合リサイクルショップのトレジャーファクトリーや、DVDレンタル「GEO」などが主力でリサイクル品販売も手がけるゲオホールディングスなどは、洋服に関するネット通販の比率が拡大している。リユース品もネットの時代に入りつつある。
消費税増税で消費マインドが低下する懸念はあるが、付加価値の高い商品やお値打ち品を手がけるネット通販の比率は、拡大傾向が続く可能性が高い。
(文=和島英樹/日経ラジオ記者)