ギネス記録認定対象となる競技は、どんな基準で決まる?サポート窓口に聞いてみた
この連載企画『だから直接聞いてみた for ビジネス』では、知ってトクもしなければ、自慢もできない、だけど気になって眠れない、世にはびこる難問奇問(?)を、当事者である企業さんに直撃取材して解決します。今回は放送作家の鮫肌文殊氏が、テレビ番組などでもよく耳にするギネス記録にまつわる疑問について迫ります。
【今回ご回答いただいた企業】
株式会社ブランド総合研究所 世界記録サポート窓口 様
テレビのバラエティ番組には、いくつか定番ネタというものが存在する。
中でもネタに詰まって困った時に重宝するのが「ギネスに挑戦」企画。皆さんも今まで多くの番組で、いろいろなパターンを見てきた記憶があるだろう。
この企画、番組の身の丈に合った「ギネス記録」にチャレンジすればいいから便利だ。予算を潤沢に使える番組であれば、海外までロケに出かけて、その記録保持者に挑戦状を叩きつけて世界一を賭けて勝負すればいいだろう。
逆に、予算が少ない深夜のアイドル番組なら、机の上でできるような地味なギネス記録がいっぱいあるので、それにかわいいアイドルたちが挑戦すれば、すぐに5分くらいのコーナーは埋まる。もっとゆるい真夜中枠であれば、それだけで番組1本つくることも可能だ。
例えば、お笑いタレントの庄司智春(品川庄司)が4年前に打ち立てた「1分間にお尻でクルミを割るギネス記録」。まさに「ギネスに挑戦」をそのまま2時間スペシャルにした番組の中で達成した。この企画は、ロケの費用対効果がすごい。なにせ、クルミと海パン一丁の庄司だけで番組が成り立ってしまうからだ。しかも、まさか本当にギネス記録を達成してしまったら、世界中に情報が配信されるかもしれない。
なにより、どんなアホらしい記録でも「ギネス記録達成!」というブランディングが成された瞬間に、妙な感動を生むものなのだ。私はこの番組を見てはいないのだが、多分こんな「お尻でクルミ割り」みたいなハッキリ言ってどうでもいい記録さえ、一種の感動を視聴者に与えたに違いない。
このように便利な「ギネスに挑戦」企画であるが、ギネス記録の中にはポンコツで雑な記録がいくつかある。
いったい「ギネス記録を認定」する挑戦競技の基準は、どうなっているのだろうか? だから直接、ギネス世界記録への挑戦サポートをオフィシャルに認可されている、株式会社ブランド総合研究所の世界記録サポート窓口に聞いてみた。
「挑戦する競技が、ギネス世界記録の対象となるかどうかは、どのように決められているのでしょうか?」
担当者 規定は細かくあるのですが、最終的には世界記録を認定する機関であるギネスワールドレコーズが興味を持つかどうかになります。また、危険な作業を伴う挑戦の場合、身体にケガをしたり、命に関わる危険度が高いものはNGになる可能性は高いです。しかし、例えば運動会レベルで、転ぶ危険などの程度であればOKの可能性はあります。
–「ストローを口の中に400本入れてギネス記録」というのを見たことがあるのですが、そのようにギネス記録は「発想勝負」で、新しくて面白いものを申請すると認定されやすいということはありますか?
担当者 面白い企画を提案すれば申請が通りやすいということではなく、例えば、今の例の「ストロー400本」ですと、世界中で誰が見てもわかりやすいし、挑戦しやすいですよね。ギネス社としては、同じルール・限定条件で、多くの人に挑戦してもらいたいということが前提にありますので、「ルールをつくりやすいかどうか」が基準になってきます。従って、「自分で考えたすごく複雑なゲーム」を申請したいと提案されても「あなたにはわかるかもしれないけれど、世界的には理解されない」となるでしょう。見た人が「面白い」「挑戦してみたい」と思うことがなければ、次の更新もありません。それが、申請が通るかどうかの条件にもなってきます。
ギネス社には毎日1000件くらい新規の申請依頼がきています。その中で目に留まる企画書が必要です。
–ありがとうございます。
とにかく、ギネス社が相手にしているのは世界なので、世界基準で「ルールがわかりやすくて、誰もが思わず挑戦したくるもの」が好ましいとのこと。結局のところ、ギネス社の担当者の心の琴線に触れる秀逸な挑戦ネタならOKということだろうか。
それにしても、雑だと思っていた記録も、毎日1000件提出される企画書から厳選されたものだは驚いた。これから番組で扱う時、どのような記録にもリスペクトしたいと思ったのでありました。
(文=鮫肌文殊/放送作家)
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