プロテクティブは米国の保険会社約800社中、保険料収入ベースで36位で、本業の生命保険事業や個人年金事業に加え、これまで47件の小型買収を繰り返し事業規模を拡大してきた。
第一生命の渡邉光一郎社長は6月18日付日本経済新聞の取材に対し「先進国の中で一番人口増加率が高い米国の生保市場は、今後も年4%程度の市場成長が見込める」と、米国市場進出の目的を説明。また、プロテクティブを買収した理由について「M&Aを繰り返して成長してきた同社は、買収後のコスト削減やシステム運用で豊富な経験を持ち、当社にないノウハウを持っている」と述べ、米国内での今後の買収はもとより、アジアや欧州での買収でもプロテクティブのM&A手法を活用し、本格的なグローバル展開を目指す考えを示した。このため第一生命は、買収後もプロテクティブの現経営陣を続投させると共に、同社へ一定数の執行役員と出向者を派遣し、同社のM&A手法を学ばせる意向も示している。
プロテクティブ買収後の第一生命は、保険料収入で生保業界トップの日本生命と肩を並べる規模になる。さらにプロテクティブの買収シナリオが成功して着々と業容が拡大すれば、同社が「業界万年2位」の地位から脱し、不動といわれた業界盟主の座を日本生命から奪うのは時間の問題となる。
このため株式市場関係者の間では「今回の買収をきっかけに、業界再編と国内生保の海外M&Aが本格化する」(証券アナリスト)と期待する声が多い。
●海外進出を見据えた「株転・上場」
第一生命の今回の巨額買収の布石となったのが、2010年4月1日に行った相互会社から株式会社への組織変更と東証一部上場、いわゆる「株転・上場」だった。日本最古の相互会社形式による生保であった同社が、「株式会社は契約者の相互扶助を理念とする生保の経営組織に合わない」といわれた業界の常識に背を向けてまで株転・上場に踏み切ったのは、初めから本格的な海外進出が目的だった。国内は少子高齢化が進み、生保市場が縮小するのが目に見えていたからだ。
日本の生保市場は、保険料収入で今も世界2位の規模だが、業界全体の保有契約高(個人保険)は1996年の約1500兆円をピークに、現在はその40%程度に縮小している。生保はストックビジネスなので短期的に大きな影響はないが、中長期的には縮小均衡が避けられない。つまり、国内市場にとどまっていては成長できないのだ。
これは業界全体の収支状況を見れば一目瞭然だ。生保の基本的な収益力を示す基礎利益は06年をピークに右肩下がり。「儲かる商品」の死亡保障保険の保有契約高が減少しているのが原因だ。さらに世間を騒がせた保険金不払い問題の改善によるコスト増などもあり、基礎利益要素の1つである費差益も年々減少。基礎利益の大半を占める危険差益も、保有契約高の減少に連動して目減りしている。加えて低金利の恒常化による逆ザヤの解消もいつになるのか、今のところ見通しがつかない。