「週刊現代」(講談社/6月14日号)の特集『被害者続出、いったいどういうことだ! 「がん保険」がんになってもカネは出ない』によれば、「いざ」という時のために加入したがん保険のはずが、実際にがんになっても、保険金が支払われないトラブルが頻発しているという。
「昨年度、国民生活センターに寄せられた医療保険に関するトラブルは1035件にも上っている。『実際に相談を受けている現場の感覚としては、がん保険に関するトラブルはとくに目立っています。具体的には、保険勧誘時の説明不足から生じるものが多い』(国民生活センター相談情報部担当者)」
保険金が支払われない5つのケース
(1)保険金が支払われない種類のがんになったケース
例えば、粘膜のような上皮内にとどまっているごく初期のがんである「上皮内新生物」では、保険金が出ない、もしくは一時給付金が減額される商品があるという。
さらに、この上皮内新生物かどうかは最終的に病理医が判断するが、その判断は医師によってまちまち。「診断する病理医によって、保険金が出るか出ないか異なる可能性もある」と医療コーディネーターが語っているほどだ。
(2)加入後、すぐにがんになったケース
しかし、もし上皮内新生物でも保険金が下りるタイプのがん保険だったとしても、「責任開始日」の存在があることを忘れてはならない。責任開始日とは、がん保険の場合、加入した日(申し込み、診査<告知>、第1回保険料相当額払い込みの3つすべてが揃った日)を保険期間の始期とし、その日を含めて90日が経過した日の翌日が責任開始日となる。それ以前にがんが発覚しても保険金が出ないのだ。
(3)入院しないケース
がん保険の中には「がんの治療を目的とする入院をしたこと」が保険金支払いの条件になっている商品もあり、通院治療だけの場合には保険金が出ない。
(4) 病歴告知をミスしたケース
また、がん保険に入る前には過去の病歴や現在の健康状態を申告する必要があるが、後に申告漏れが発覚すると、「告知義務違反」とされて契約を解除されることがある。契約を解除されれば、保険金が出ないだけでなく、これまで払い続けてきたカネも戻ってこない。加入前の申告はごく簡単な質問項目しかないため、こうしたトラブルは起こりがちだ。
「加入してから2年以内に保険金を請求した場合は、必ず保険会社の調査が入ります。健康保険の情報から、その人の通院歴などを調べるのです」(医療コンサルタント)
(5)再発したケース
「診断給付金と手術給付金は一度限りという条件」の保険商品の場合、再発したがんに対しては保険金が出ない。
「診断給付金については、2年に1度を上限とする商品も多いですが、ある外資系生保のがん保険では、初回の診断から5年以上経過した場合という条件になっている」(医療コンサルタント)
がん保険は保険会社が儲かる仕組み
あの手この手でカネを支払わずに済まそうとする保険会社。がん保険でトクをするのは保険会社にほかならない。しかし、「2人に1人ががんになる」時代、万一の時に備えて、がん保険に入っておきたいというのも人情だ。
ただ、この「2人に1人ががんになる」といわれているのも、保険会社側の都合のいい数字のトリックだと専門家はいう。がん罹患リスクを年代別に見てみると、「たとえば50歳の男性が10年後までにがんにかかる確率は5%。60歳の男性でも、10年後までにがんになる確率は15%。つまり現役世代だと、がん保険は90%ほどの確率で出番がない」(専門家)。
がん罹患リスクが高まるのは高齢になってからの話。「リスクを恐れて40歳からがん保険に加入していても、がんになるまでの40年間に払い続ける掛け金はほぼすべてが保険会社の儲けになっていると言っても過言ではない」(同記事)
「代理店としても『がんになりそうもない、健康な顧客を積極的に集める』というのは暗黙の了解になっています」と保険代理店関係者。記事は「いざ」という時に裏切るがん保険よりも、ある程度の貯金が大事と、まとめている。
また、コラム紹介サイト「マネーの達人」の6月3日記事『保険のプロが入るコスパが高い「がん保険」、とうとう販売終了へ…』(釜口博)によれば、インターネットや雑誌などで「ファイナンシャルプランナーがすすめるがん保険」「保険のプロが入る保険!」として常に上位にランクインするがん保険「AIG富士生命 がんベスト・ゴールド」は、人気が集まったために、6月いっぱいで販売終了となるというのだ。
「7月以降は『がんベスト・ゴールドアルファ』という商品名になり内容も改定。先進医療特約の上限金額が2000万円までに改定される。ところが、保険料は1.5~2倍に跳ね上がることに」「顧客にとってメリットのある保険商品は、必ずと言っていいほど『販売停止』になる傾向がある」(同記事より)が、「AIG富士生命 がんベスト・ゴールド」も、その例に漏れずということのようだ。
(文=松井克明/CFP)