というのは、保険業界もビジネスであり、儲けを生み出すためにさまざまな工夫を凝らしている。その時々の金利動向や販売員に払われる手数料などの影響で、販売員が勧める保険商品が変わってくるからだ。
「保険のテレビコマーシャルは、見ている人の不安をあおることや、その保険のメリットばかりを強調しているように感じます。反対にデメリットと思えることであっても、表現方法を変えるとメリットに聞こえてきてしまうから不思議なものです」と『生命保険にだまされるな!』(横川由理・長尾義弘監修/宝島社新書)は指摘している。
●保険料が上がらないのは、保障が低いから
デメリットをメリットのようにだます、注意すべき手口が「保険料は一生上がりません」という表現だ。
そもそも、年齢を重ねるにつれ死亡する確率や入院する確率が高くなることから、更新を迎えると保険料は高くなりがちだ。そこへ「保険料は一生上がりません」という表現で誘われれば飛びつきたくなるのも人情だ。病気やケガで「入院すると1日5000円の保障(1入院60日や120日)、この保障が一生涯続く」といった保障を目当てに、一生涯保険金を支払い続けることになる。
しかし、そうした保険の多くは「保障の低い」医療保険やがん保険なのだ。例えば、最大で60万円(5000円×120日)の保障を受けるために毎月2000円支払うケースを考えれば、毎月2000円を25年貯蓄して60万円を貯めるほうがいい。一生を通じて100万円超を払い込んだ上に、入院せずに死亡するケースもあり得る。結局、掛け捨ての保険のため、払っただけ損になる。しかも、高額療養費制度など公的な保険も充実しているうえに、医療技術も発達して、長期間入院するケースは少なく、加入しても損をする可能性が高い。
つまり、「一生涯、保障が低い」というデメリットを「保険料は一生上がりません」とメリットのように表現して、加入者を伸ばしているのが医療・がん保険なのだ。
●終身保険は損?
また、生涯保障が続く終身保険も注意が必要だ。
「(終身保険は)貯蓄性のある保険というと良いイメージを持つものですが、予定利率の低い現在は、終身保険のメリットを感じられません。なぜなら平均寿命で死亡すると考えた場合、保険金は自分で貯蓄を行ったときと比べてたいして変わらないからです」
ただし、終身保険は死亡保険金として法定相続人1人につき500万円までが非課税になるため、相続税対策としての活用は有用だという。