造船業界には老舗企業が多い。
戦前の佐世保海軍工廠の流れを継ぐ佐世保重工業が、名村造船所の完全子会社になる。経営が悪化している佐世保重工の救済であり、新日鐵住金が名村造船の7.2%、佐世保重工の9.6%の株式を保有する筆頭株主となるが、新日鐵住金が出資先企業の再編に乗り出したわけだ。
名門造船所は脱造船を進める。三菱重工業は一般商船から撤退し、造船部門の売り上げは全社の8%程度しかない。日立製作所と事業統合したドル箱の大型ガスタービンを含む火力発電設備が、規模・収益ともに拡大中だ。
「造船王国ニッポン」を担った造船業界は、三菱重工業、石川島播磨重工業、川崎重工業、三井造船、日立造船、住友重機械工業、日本鋼管が大手7社といわれた。
02年に石川島播磨と住友重機の造船部門が統合してアイ・エイチ・アイ(IHI)・マリンユナイテッドが発足し、IHI(旧石川島播磨)の子会社になった。同年、日本鋼管(NKK)と日立造船の合弁でスタートしたユニバーサル造船はJFEホールディングス(川崎製鉄とNKKの合併会社)の子会社となった。そして13年には、IHIマリンとユニバーサル造船が合併してジャパンマリンユナイテッドが誕生。造船を切り離したJFEは高炉会社となる。IHIは自動車用ターボで世界大手で、住友重機は変速機で世界2位、日立造船はゴミ焼却発電装置が経営の柱になるなど、大手造船各社は「脱造船」を加速させている。
13年には川重と三井造船の合併交渉が進められたが、川重の役員の大半が、この合併に反対。合併推進派の社長を解任する事態になり、合併話は立ち消えとなった。
三井造船は売り上げの56%を船舶が占めている。川重は鉄道車両や小型ガスタービンに強みがあり、船舶は6%程度しかない。川重が三井造船との合併で、将来性が見込めないとみる造船の比重が高まることを嫌ったのが、破談になった理由だ。
建造量では今治造船が国内トップ。かつての大手7社の中で本格的に造船事業を手掛けているのは三井造船だけとなった。浮体式の原油生産貯蔵設備を建造する子会社、三井海洋開発をM&A(合併・買収)で狙っている会社は多い。そのため業界内では、三井海洋開発の株式を50.1%握っている三井造船がM&Aされる可能性もあるといわれている。
(文=編集部)