(「ウィキペディア」より)
ジェネリックに駆逐された米国のアリセプト
アリセプトは、アルツハイマー型認知症(AD)の治療薬だ。一般名はドネペジル。エーザイが創製した日本発の薬としても知られる。国内では1999年11月に発売され、昨年まで唯一のAD薬として医療機関や患者、その家族から絶大な支持を受けてきた。世界でも、ファイザーとコ・プロモーション(共同販促)契約を結び100カ国近くの国に展開。年間1000億円以上を売り上げるブロックバスター(大型医薬品)のひとつとして業界では有名で、長いあいだエーザイの収益を支えてきた。
だが、すでに基本特許が切れており、同じ成分で低価格のジェネリック医薬品が登場している。ジェネリック医薬品は新薬と同成分のため、臨床試験実施などの開発コストが安い。そのため、廉価で販売できる。とくに米国では、ほとんどがジェネリック医薬品に移行した。エーザイが11年11月に発表した同年度中間(4ー9月期)決算では、米国のアリセプト売上高は前年同期比93.1%マイナスの73億円だった。予想した以上にジェネリックへの移行が進み、大打撃を受けた格好だ。通期でも相当のマイナス影響が出そうだ。
特許切れでも日本では稼ぎ頭
ジェネリックの普及が進み、社会保障の仕組みも違うアメリカではほぼ「役割を終えた」アリセプトだが、日本ではちょっと事情が異なる。日本は先発薬(新たに開発された薬)とジェネリックの価格差が実はあまりない。米国ではジェネリックの価格は先発薬の10分の1。日本は7割以下とされる。しかも「医療費3割負担」のおかげで患者が支払う費用での差は、ほんのわずかに見える。また、過去に価格の安さだけを売りにしたジェネリック医薬品が横行したことなどから、今も品質面などでジェネリックに不安を持つ医師・患者も多く、これまでは普及がなかなか進んでこなかった。普及率は数量ベースで全体の23%程度だとされる。
そんな事情のおかげで、アリセプトの国内売り上げも好調だ。医薬品市場調査会社、IMSの調べでは、11年にはアリセプトが初めて、日本で最も売れた医薬品になった。売上高は 1442億円。武田薬品工業の高血圧治療薬「ブロプレス」など、生活習慣病領域の巨大なマーケットを持つ新薬群を抜き去った。エーザイの内藤晴夫社長も「日本でのアリセプト売上高1000億円を当面維持する」と目標を示している。