リブセンス、スピード上場のお手本は、田中角栄のバラまき政治?
村上太一社長のリブセンス(「同社HP」より)
10月1日、求人情報サービスのリブセンスが、東証上場後わずか10カ月で東証第1部に市場変更することとなり、話題になっている。同社は、昨年12月、25歳1カ月で新規上場を果たし最年少記録を更新した村上太一氏が創業したベンチャーだが、どんな会社だろうか?
リブセンスのサービスには、正社員、パート・アルバイト、派遣社員それぞれの求人サイトを中心に、賃貸住宅の物件情報サイト、中古車情報サイト、転職口コミサイトなどが揃っている。PCサイトもガラケーサイトもスマホサイトもある。そのほとんどは、リクルートなどがインターネットの商業利用が始まるずっと以前から情報誌を発行しては広告を集めてきた分野で、ジャンルだけ見れば競合の多いレッドオーシャン。営業の最前線では相見積もりやコンペで、料金のたたき合いもよく起きる。実績もブランド力も政治力もないベンチャーがこの不景気にどうやって成功できたか、不思議に思うかもしれない。
その理由としてメディアでよく紹介されていたのが、「成功報酬型ビジネスモデル」だった。掲載時の広告料はゼロ。結果が出たらお金をいただきますというやり方で、求人サイトなら採用に至った人数、賃貸物件情報サイトなら問い合わせ件数、中古車情報サイトなら成約件数でカウントし、それに応じて広告主は報酬を支払う。もし結果が出なければ、原則広告主は一銭も支払わなくていい。
だが、これも各社が右へならえしたら、リブセンスのアドバンテージはなくなる。すでに主力の求人サイトの分野では、大手のエン・ジャパンなどが成功報酬のシステムを取り入れて攻勢をかけている。それでも、リブセンスのビジネスモデルには「祝い金」というもう一つの特徴があり、それによって、競争上まだ優位に立つことができているようだ。
例えば求人サイトなら、応募して採用が決まった人には、正社員なら最大10万円の祝い金を支給している。これはリブセンスのサイトで仕事を探した人への「成功報酬」とも言える。
その原資は広告主から得た成功報酬の一部なのだが、「祝い金」名目だから、お金をもらった人はリブセンスからプレゼントされたと思うだろう。そこがポイントだ。
ユーザがタダで宣伝してくれる
もともとネットで求人に応募した人だから、祝い金のことも就職報告がてら、SNSなどで他人に伝えるだろうと想定できる。フェイスブックやツイッター、口コミサイトなどに「就職も決まって、おまけに10万円をもらってうれしい」などと書いたりする。
リブセンスからすれば、それはタダで会社を宣伝してくれているようなもの。求人サイトのネット上の評判が良くなり、「求人広告に応募して採用されたら10万円くれるって本当か?」と、興味半分にでもアクセス数が上がってくれれば、リブセンスとしては広告主への営業上ますます有利になる。
営業職や事務職のような一般的な職種であれば、求人広告を見た「母集団」が大きければ大きいほど、良い人材が獲得できる可能性が高まるからである。その宣伝効果は、10万円支払っても十分まかなえるぐらい大きいだろう。
お金をプレゼントしてくれた相手を呪ったり、けなしたりする人はまずいない。文字通り“現金な”人間の本性をうまく利用するこのやり方は、なかなかセンスがある。