JALは今年8月、MRJを32機発注した。納入されるのは21年とかなり先で、JAL子会社で国内地方路線を担当するジェイエアが運航する計画だ。JALグループの地方路線は現在、エンブラエルの小型ジェット機とボンバルティアのプロペラ機を採用している。JALはMRJの発注と同時に、エンブラエル機を合計27機購入することにした。
一度、エンブラエル機を導入した上でMRJに切り替えることになるが、その理由はMRJがこれまでにも納入延期を繰り返してきたからだ。21年にMRJの納入が遅れても運航に支障が出ないように、エンブラエル機を導入することにした。MRJの納入延期に備えて、エンブラエル機で“保険”をかけたわけだ。JALグループのエンブラエル機は現在、羽田-山形・紀州白浜、伊丹-福岡・仙台などの路線で利用されており、JALのMRJは羽田空港発着便に投入されることになりそうだ。
MRJが実際に就航するまでには高いハードルがある。来年4~6月に予定する初飛行による膨大なデータを用いて安全性を客観的に証明し、国から機体の安全認証を得ることになるが、これが航空機開発における最大の難関だ。
●中国、初の国産ジェット旅客機離陸
一方、海外の競合他社でもリージョナルジェット開発が盛んだ。例えば中国・上海の国有航空機メーカー、中国商用飛機(COMAC)は「ARJ21」を開発。早ければ年内にも中国国内で運航を開始する。ARJは座席数70~90席で、MRJと同クラスである。アフリカのコンゴに3機売り込んだほか、国内外で278機を受注したと発表されている。だが、米国連邦航空局(FAA)から型式証明は取得しておらず、現時点では中国国内でしか飛行できない。
中国では今後20年間で6000機の航空機需要があるといわれており、78兆円の大市場が待っている。COMACは国内の受注で製造を続け、まずは技術を集積するとみられている。ARJが実績を積み上げれば、欧米の航空会社もその存在を無視できなくなる。国内市場をテコに、中国が世界大手による寡占が続く航空産業に風穴を開ける可能性もある。
現在、日本と中国は鉄道輸出でしのぎを削っているが、リージョナルジェット市場でも激しい戦いを繰り広げることになりそうだ。
(文=編集部)