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小林敬幸「ビジネスのホント」(12月22日)

KAWAii文化とは何か 3系統の分類ときゃりーの成功から、海外ビジネス戦略を考察

文=小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者

 さらにいえば、青文字系はストーリーに対する関心が希薄で、感性によって「かわいい」か「かわいくない」かの瞬間的な判断を優先するように感じる。この点は、萌えオタク系がアニメの歴史やストーリーに詳しくこだわりを持ち、ファッションの美しさよりもその服の意味にこだわるのと対照的だ。また、赤文字系が、ブランドやファッションの時代による変遷や、TPOに合った「着回し」に関心を払うのとも異なっている。

 やや強引に言えば、エロスがなくストーリーよりも明るい感性を優先する青文字系は、清少納言。愛されることに関心が高く、場面転換のあるストーリーを好む赤文字系は古典『源氏物語』の作者・紫式部。エロスとストーリーが優先され、簡略化された個性的な絵画的表現を好む萌えおたく系は、浮世絵の系統といえよう。

●海外ビジネス戦略

 さて、このように、KAWAii文化の内容が何を含んでいて、それぞれがどういう関係であり、どのように海外・国内で受けているのかよく理解した上で、ビジネスの戦略を練らないといけない。

 先日、タイムアウト東京で行われたトークショーで、アソビシステムの中川氏は、KAWAii文化の世界への発信を目指して自身が立ち上げている「もしもしにっぽん」プロジェクトの説明を行った。そこで筆者は、海外で受けているKAWAii文化は萌えおたく系が大きな部分を占めるが、青文字系のアソビシステムとしてはどうするのかと質問してみた。
中川氏は次のように非常に明快に答えてくれた。

「海外と国内を完全に分けて考えている。国内は今まで通り萌えオタク系とも赤文字系とも違う青文字系の道でいく。一方、海外は間口を広く敷居を低くし、萌えオタク系も赤文字系も取り込んでいく。従って、海外での『もしもしにっぽん』においては、アソビシステムは一部でしかなく、それでいいと思っている」

 海外でもきゃりーぱみゅぱみゅをヒットさせ、国内外のファンの反応を肌身で感じている中川氏だからこそ得られた結論であり、傾聴に値するといえる。
(文=小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者)

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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