とはいっても三井住友銀行との関係が切れたわけではない。三井住友が太平洋クラブから完全に手を引くのは09年9月。大和証券グループ本社が三井住友フィナンシャルグループとの提携を解消したためだ。太平洋クラブの株式をもつエヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズは大和証券の会社となり社名を大和企業投資に変更した。
●アコーディアに変わるスポンサーは宿敵PGM
10年4月、太平洋クラブは会社を分割。御殿場コースのほか御殿場ウエスト、相模、江南、軽井沢リゾートの中核5コースを切り離し、新会社、太平洋アリエスに移した。
12年1月23日、太平洋クラブは東京地裁に民事再生手続きの開始を申し立てた。負債総額はグループで1276億円。会員からの預託金は682億円あった。
1万3000人の会員と預託金のない入会金だけのパーソナル会員7000人は倒産後、初めて三井住友銀行が5年前に東急不動産系が出資するファンドに株式と債権を売却していたことを知る。2年前に御殿場コースなど優良コースが別会社に分割されていた事実も会員には、まったく伏せられていた。
しかも、あらかじめスポンサーを決めた上で申し立てるプレパッケージ型で民事再生法を申し立てた太平洋クラブが、スポンサーに立てたのがアコーディア・ゴルフである。アコーディアは三井住友銀行と深い関係にある米投資銀行ゴールドマン・サックスが設立したゴルフ場運営会社である。
「預託金をカットした太平洋クラブをアコーディアが買収する。アコーディアからは既にゴールドマンが撤退しており、ゴールドマンに替わって東急不動産が日本最大のゴルフ場運営会社を手に入れるという筋書きだった」とゴルフ場業界の関係者は指摘する。
太平洋クラブは7月2日、アコーディアをスポンサーとする民事再生計画案を東京地裁に提出。アコーディアが支払うスポンサー料は280億円。このうち200億円が筆頭債権者であるファンドの太平洋HDに支払われる。さらに、この200億円はそのまま、ファンドが三井住友銀行から債権を買い取った代金の返済に充てられる。ファンドに出資した東急不動産など3社と融資した、あおぞら銀行は全額回収できる仕組みだ。しかし、会員への弁済率はたったの7%。ゴルフ場の会員はプレーする権利を取るか、93%カットされた預託金をもらうかの究極の選択となる。
弁護士が旗振り役となって2つの会員組織が立ち上げられ、会社案に反対した。
1つは「太平洋クラブ会員の権利を守る会」(世話人・西村國彦弁護士)、もう1つは「太平洋クラブ被害者の会」(代表・田邊勝己弁護士)。9月28日に会員有志が会社更生法を申し立て際の申請代理人を務めたのが「守る会」の西村國彦弁護士である。
今後の焦点は、保全管理人に選任された水沢徹弁護士が選定するスポンサーがどこになるかだ。