(「太平洋クラブHP」より)
民事再生手続きを進めていた名門ゴルフ場、太平洋クラブは10月3日、債権者集会で会社側の再生計画案が反対多数で否決された。会社側は即日、東京地裁に会社更生法の手続きの開始を申し立てた。会社側に先立ち、9月28日には債権者が会社更生法を申請していた。これを受けて東京地裁は10月3日、保全命令を出し、水沢徹弁護士を保全管理人に選任した。今後は、保全管理人のもとで、スポンサーの選定が進められることになるが、利害関係者の思惑が複雑に絡むなか、どちらの更生法申請が生かされた手続きが開始となるかだ。
ゴルフ場でプレーする権利を持つ会員たちは、会社側が主導する民事再生手続きを否決し、会社更生法による厳格で公正なスポンサー選定を求めたわけだ。太平洋クラブのスポンサーに名乗り上げていたアコーディア・ゴルフは、再生手続きの廃止決定を受けて、太平洋クラブとのスポンサー契約を解消した。
太平洋クラブは、1971年に設立された平和相互銀行系のゴルフ場。住友銀行(現三井住友銀行)が平和相銀を吸収合併して以降、住友銀行系のゴルフ場として運営されてきた。太平洋クラブ御殿場コースをはじめ17コースを保有。御殿場コースは、国内男子プロゴルフトーナメント「三井住友VISA太平洋マスターズ」の舞台となる名門コースとして知られている。
この混乱は三井住友銀行グループが07年、同クラブに対する貸付債権と株式を投資ファンドにすべて譲渡したことに端を発する。この事実は伏せられていたので、会員は猛反発、三井住友銀行のゴルフ場と思って会員権を買ったと言い募った。
07年に太平洋クラブを買収した投資ファンドは、太平洋ホールディングス(HD)合同会社。東急不動産とエヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズが各39%、メリルリンチ日本証券が22%出資した。そのエヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズは、大和証券と三井住友銀行グループの合弁会社だった。太平洋は、この時、東急不動産と資本業務提携。17コースを持つ太平洋は20コースを運営する東急と組み、強力な外資のゴルフ場経営会社への対抗軸を形成するというシナリオを描いた。
その後、太平洋HDは三井住友銀行の関連会社、田村町興産が保有していた太平洋クラブの株式を1円で取得。三井住友銀行が持っていた太平洋クラブ向けの債権566億円を、200億円で購入した。あおぞら銀行からの140億円の融資と、残り60億円はファンド連合の出資(出資金70億円)でまかなった。太平洋クラブの566億円の名目上の債権を持つ親会社は、三井住友銀行から投資ファンドに替わった。