ローソンが打ち出した大量閉鎖は、流通業界では当然と受け止められた。ローソン100の既存店売上高は2014年12月まで31カ月連続で前年実績を割り込んでいたからだ。14年2月にスタートしたローソンマートも店舗数は39店、3年で500店という目標からは程遠い状況で、苦戦は明らかだった。新浪氏が去ったことで、同社は整理に踏み込んだ。
●多様性の追求
02年、親会社の三菱商事から送り込まれてローソン社長に就いた新浪氏は、コンビニ首位を独走するセブン-イレブン・ジャパンの打倒を目標に掲げた。コンビニ業界には長らく、「セブンのまねをしていれば儲かる」という時代が続いていたが、新浪氏はセブンとは違うコンビニをつくることを目指した。コンビニの特性の1つに、どの店でも同等のサービスを受けられるという均質性があるが、新浪氏はその逆の多様性を追求した。
05年にローソン100という新しいコンビニづくりのプロジェクトを立ち上げた。野菜などの生鮮食品を小分け・適量にして100円で売るという100円生鮮コンビニである。しかし、大々的にオープンした東京・練馬の1号店は1年で閉鎖。ローソン100の事業自体も2年間で赤字が16億円に膨れ上がった。ローソン100のリーダーだった河原成昭執行役員が新浪氏に、「ローソン100は、これ以上続けてもさらに赤字が膨らみかねません。撤退する勇気も必要ではないでしょうか」と進言。だが、新浪氏はローソン100のプロジェクトメンバーに向かって次のように語り、続行を決めた。
「私はローソン100は絶対に諦めません。新しい客層を開拓しない限り、この先ローソンは生き残れないでしょう。私は、このプロジェクトは必ず成功すると信じています」
そこでローソンはライバルのM&A(合併・買収)に動く。07年に生鮮食品コンビニの先駆けである99円コンビニの「ショップ99」を営む九九プラスに出資し、08年に子会社化した。その後、ショップ99の店名をローソン100に切り替えて店舗網を拡大した。
生鮮食品を扱うミニスーパーと100円ショップの機能を融合させたローソン100は、デフレによる低価格志向の消費者に受け入れられ、10年には1000店にまで拡大した。現在、東京、名古屋、大阪、福岡など大都市圏を中心に1156店ある。ローソン100は新浪氏が周囲の反対を押し切って軌道に乗せた。生鮮食品を品揃えしたローソン100、健康志向の商品を扱うナチュラルローソン、小型スーパーのローソンマートは、いずれも新浪氏の多様性の追求から生まれた。