中国政府のお墨付きを得たローソンは11年9月、上海ローソンの経営権を取得。11年11月、大連市に大連ローソン1号店を開店した。
そして12年5月、上海市に持ち株会社、羅森投資有限公司(ローソンチャイナ)を設立。現地法人の上海ローソン、重慶ローソン、大連ローソンを、ローソンチャイナの傘下に収めた。ローソンチャイナの資本金は6億元(80億円)でローソンが100%出資している。
『2011年10月12日付中国商務部通知「クロスボーダー人民元直接投資関連問題に関する通知」、同年10月13日付中国人民銀行公告「外商直接投資人民元決済業務管理弁法」に従い、域外(中国本土外)にて、みずほコーポレート銀行及び三菱東京UFJ銀行から調達した人民元を資本金にした』(ローソンのプレスリリース)
中国商務部管轄の外資系流通企業で、域外人民元を調達して投資公司を設立したのはローソンが初めてだという。人民元を中国に還流させるという中国政府の方針をいち早く受け入れた新浪氏は、中国国内での事業展開を加速させるつもりだった。
8月末で、上海に330店、重慶に56店、大連に7店の計393店舗の店舗網にすぎないが、経済発展が顕著な華北や華南地区へ進出する計画だ。その矢先に日中関係が悪化した。今回の反日騒乱デモで中国の出店計画が予定通り進むのか、危ぶまれる事態となった。
いまさら「1万店出店」の高くて大きな旗を降ろすわけにはいかない。中国政府から“優等生”と見なされているローソンは建前論で突っ走るしかない。辛いところだ。
とはいっても、公式の記者会見の席での、白髪一万丈の大ボラはいただけない。「中国政府にいい顔をしたいばっかりに、投資家をコケにするのか」。こう批判されても抗弁のしようがあるまい。
それにしても流通業界を担当する記者は勇気がない。「新浪さん、1万店を達成できなかったらどうするのですか」ぐらいは言うべきではないのか?
何故、言わないのか? という問に対する答えは「だって、20年まで新浪さんがローソンの社長をやっている可能性は限りなくゼロに近いから」(全国紙の流通担当記者)だという。この記者は総合商社も取材しており、ローソンの親会社、三菱商事(ローソンに31.9%出資)の首脳にも近い人物。そんな記者の言が「新浪さんは、早ければ来年春に交代しますから」だ。
だからといって東証1部上場企業の名前が知れ渡っているトップが、何を言っても許されるわけではない。「出来もしないことを出来ると言いふらすのは、やってもいないことをやったと言って読売新聞に大誤報させた『iPS森口ニセ教授』と似ている」(ライバルの流通企業の幹部)。「自己顕示欲という意味では2人は同じ」(同)。もし、そうだとしても公約が達成されなかったら、新浪氏を厳しく追及すべきなのだ。
(文=編集部)