恐ろしい老後〜年金受給額半減、あと20年で積立金枯渇?消費増税も加わり…
年金は本来、物価が上昇すれば給付額が増え、物価が下落すれば減るものだが、これまでは特例としてデフレ時代にもかかわらず、本来よりも2.5%高い水準の年金が給付されていた。これまで高水準の給付を続けたために、払い過ぎた年金の総額は約7兆円とされている。3回の年金の引き下げを経て、15年4月には夫がサラリーマンだった老夫婦(夫が40年間厚生年金に加入し、妻が専業主婦だった夫婦)の場合、現在より年間約7万円少なくなる予定だ。
しかし、こうした給付の見直しも、現行の年金制度のままでは付け焼き刃にすぎない。現行の年金制度は、12年度末時点で126兆円もある積立金を、100年間かけて取り崩しながら給付を続ける仕組みだ。このため、04年から自公政権は「100年安心」と喧伝していた。しかし、このフレーズは、「100年安心」という答えありきで経済前提が作られたもの。経済情勢の悪化や高齢化もあって、楽観的に想定された経済前提が崩れ、それどころか早ければ30年代に枯渇する恐れがあるというのだ。
●年金は減り続ける
また、枯渇しなくても、年金積立金を100年維持するためには、給付カットが必要になるが、今回試算されたところによれば、遅く生まれた世代ほど、受け取れる金額が減ることが明らかになった。
平均月収が35.8万円の男性単身の場合、09年度に65歳を迎えた男性の受け取り額は15~16万円だ。25年度に65歳を迎える1960年生まれの場合は試算では12.7万円、85年生まれの場合には、7.7万円まで下がってしまうのだ(厚労省の試算は13.1万円となっており、大きなズレがある)。
すでに制度は破綻している。だからこそ、抜本的な社会保障改革が必要だったのだが、後回しになってしまった。
消費増税とセットで行われていた自公民の社会保障改革の三党協議も、抜本的な改革を主張する民主党と現行制度の手直しを主張する自公の間で議論は平行線をたどり、結局、消費税率10%への引き上げと必要加入期間の短縮、厚生年金の適用拡大といった制度の充実案だけが決まった。抜本的改革への道は、ますます険しくなりそうだ。
そもそも政治家は“票”に直結する高齢者の反発を恐れ、年金給付カットや負担増となる改革案には二の足を踏んできた。特に安倍首相は、第一次政権時代の07年に、いわゆる「消えた年金」問題で支持率が急降下した経緯もあり、年金改革には及び腰だ。
社会保障改革とセットだったはずの消費増税だけがひとり歩きし、消費者への負担増となる、というのが現実だ。今号の特集Part2では「年齢・収入別年金試算」として、楽観シナリオ・中間シナリオ・悲観シナリオで、もらえる年金額をシミュレーションしている。老後のライフプランを検討する際には、見ておきたい資料となりそうだ。
(文=松井克明/CFP)