ビジネスジャーナル > 経済ニュース >  水田クレジット最前線

【一次産業×脱炭素で地球を救う #1】売るのは「米」だけじゃない。環境価値が農家を変える — 水田クレジット最前線

2025.07.16 2025.08.24 13:46 経済

【一次産業×脱炭素で地球を救う #1】売るのは「米」だけじゃない。環境価値が農家を変える — 水田クレジット最前線の画像1気候変動対策と聞くと、多くの人が工場やエネルギー産業などの「二次産業」を思い浮かべるかもしれません。実際、CO2排出量を意識し、カーボンクレジットの購入や創出に積極的な企業も増えています。
しかし、地球温暖化に加えて「食」を取り巻く不安も高まるなか、農業や酪農などの「一次産業」もまた、脱炭素の担い手として注目されつつあります。

本連載【一次産業×脱炭素で地球を救う】では、これまで環境配慮とは縁遠いとされてきた一次産業の現場が、脱炭素というテーマとどう向き合っているのかを追っていきます。

第1回のテーマは、Green Carbon株式会社が導入を推進するネイチャーベースのカーボンクレジット「水田クレジット」。「農家の皆さまの幸せにつながることが、最も重要」と語るGreen Carbon社の吉見氏に、米農家が直面する課題と、水田クレジットがもたらす可能性を伺いました。

米農家が直面する、3つの大きな課題

日本の一次産業が多くの課題を抱えていることは、すでに多くの人が知るところです。なかでも米農家が直面しているのは、主に以下の3つです。

  • 後継者不足
  • 肥料・農薬の価格高騰
  • 米単価の不安定さ

吉見氏によれば、米農家の平均年齢は65歳以上。40代でも「若手」とされるほど高齢化が進み、担い手不足に悩まされています。新規就農への意欲があっても、例えば重機の購入など数千万円単位の初期投資が障壁となり、参入が難しいのが現状です。
さらに肥料や農薬は主に輸入に頼っているケースが多く、昨今の国際情勢の影響で価格が高騰。それが経営に直結する深刻な負担になっています。

そして、最近では米の単価も不安定。価格が上がれば利益は出やすくなりますが、一方で消費者の「米離れ」を招くリスクもあります。需要の減少が急激な価格下落を引き起こし、経営を圧迫する場合もあるのです。 生産者・消費者の両方にとって、適正価格が定まらない状況は大きなリスクです。

「もうひとつの収穫」──水田クレジットがもたらす新たな収益

こうした課題に対して、Green Carbon社が提案するのが「水田クレジット」です。
これは、水田の“中干し”期間を延ばすことでメタンの排出を抑制し、クレジットとして価値化する仕組み。

水田に水が張られて酸素が届かない状態では、嫌気性微生物が有機物を分解し、温室効果ガスのメタンを発生させます。中干し期間を過去2年の平均より7日延長することで、その期間分がクレジットの対象になります。延長による収穫への影響を懸念する声もありますが、リスクがある場合は中断でき、ペナルティも発生しません。

【一次産業×脱炭素で地球を救う #1】売るのは「米」だけじゃない。環境価値が農家を変える — 水田クレジット最前線の画像2

吉見氏は、水田クレジットを活用したGreen Carbon社の取り組みについて、「カーボンクレジットを、米農家において副収入となり得る新たな収益として考えている」と話します。

Green Carbon社では、水田クレジットを1ヘクタールあたりの価格で算出しており、エリアによって差があるものの、大規模農業の場合は数十万〜数百万円規模の副収入になることもあります。高騰する農業資材費や人件費の一部を補える可能性があるのです。

現在、導入しているのは全体の3%ほどで、平均耕地面積40ヘクタール以上の大規模農家が中心。これは面積が広ければ広いほど、水田クレジット導入における手間に対して、得られる収益のメリットを感じやすいためでしょう。
30〜50代の若手農家の関心が高く、次世代の担い手が農家の新たな価値向上の一手に取り組み始めています。

【一次産業×脱炭素で地球を救う #1】売るのは「米」だけじゃない。環境価値が農家を変える — 水田クレジット最前線の画像3

利益は“社員旅行”に?水田クレジットがもたらす副次効果

Green Carbon社では当初、クレジットで得た利益は農薬や重機の購入に使われると想定していました。ところが実際には、社員旅行など、従業員への還元に使うケースが目立ったといいます。

また、吉見氏は「最初は多くの米農家が“リスク”と捉える中干しの延長に対しても、実際の導入後はポジティブな意見が寄せられることも多い」と話します。水はけのやや悪い土壌にもかかわらず、周囲の農家と同じ日数で中干しをしていた場合、水田クレジット創出のための中干しの延長が、結果的に稲の生育促進につながるケースがあったためです。

一方、現時点で「環境への貢献」を導入理由に挙げる農家は少なく、いかに環境価値を“実感”できるかも、今後の普及には重要なポイントです。

“環境にやさしいお米”が、米の価値を高める

Green Carbon社は、さらなる展開として「環境配慮米」のブランド化にも取り組んでいます。
これは、水田クレジットを通じて環境負荷を抑えながら収穫した米に、新たな価値をつけて販売するというもの。水田クレジットの導入と同時に、米単価の上昇に寄与できるのです。
実際、大手チェーンやコンビニでも、環境に配慮した食材を求める動きが強まっており、出口が明確な販売ルートは農家にとっても大きな魅力です。

また昨年夏には、キッチンカー企業と協業し、『お台場冒険王』で、おにぎりの販売量に比例してどれだけのCO2が削減できたか? をコンテンツ化して見せるなどの取り組みを行いました。これは、消費者にも環境配慮への意識を促すと同時に、環境配慮米のブランド化と消費が、米農家の収益や事業継続につながっていることを認識してもらう取り組みです。

環境配慮米の販売は、2024年には4,000トン・20億円規模が見込まれており、今後さらなる広がりが期待されます。

実際のお台場冒険王での出展の様子(2024年)
実際のお台場冒険王での出展の様子(2024年)

カーボンクレジットを軸に、農業課題を多角的に解決する

Green Carbon社の取り組みは、水田クレジットや環境配慮米にとどまりません。たとえば、収穫量を減らす「倒伏」(※)を防ぐ薬剤や、除草剤の使用量を減らす技術など、農業支援のソリューションも展開しています。
国内には現在、約136万ヘクタールの水田があり、すべてに水田クレジット導入が行われると、その規模は約140億円。Green Carbonはその30〜40%のシェアを目指しつつ、酪農や森林クレジットにも領域を広げつつあります。

その中核にあるのは、「一次産業に関わる方々が幸せになる取り組みかどうか」。そのためには、「カーボンクレジット導入の拡大もさることながら、一次産業におけるサポートのスキーム化が大切」と、吉見氏は語ります。たとえば、従業員が不足している米農家に対して人材を派遣できる仕組みや、新規就農希望者と担い手の不在に悩む米農家とのマッチングなど、課題に対する最適なスキームづくりを進めています。

水田クレジットをはじめ、販売や人材など多角的にアプローチすることで、米農家の「作物単価の上昇」「収益の増加」「支出の減少」というポイントに具体的なメリットをもたらすことが可能になるでしょう。

※ 倒伏:米や麦など穀物の茎が地面近くで曲がること。収穫が困難になり、収穫量に大きく影響する。

米農家が「環境価値の創出者」になる日

脱炭素やサステナビリティが加速する今、農家が「作物を育てるだけ」でなく、「環境価値を生み出す存在」としても評価される時代が近づいています。

Green Carbonの取り組みは、その可能性を具体的に示すものです。
農業に新しい選択肢が生まれ、現場の意識が変わり、持続可能な未来が形づくられていく——。そんな変化の兆しが、田んぼの中から静かに、しかし力強く始まっています。

※本稿はPR記事です。

BusinessJournal編集部

Business Journal

ポジティブ視点の考察で企業活動を応援 企業とともに歩む「共創型メディア」

X: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

ニュースサイト「Business Journal」