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碓井広義「ひとことでは言えない」

ある小さな町の広報紙がヤバすぎる!写真にスマホをかざすと音声と映像が!

文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授
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ARとは?

 近年、広報映像の発信方法が多様化している。いわゆる広報番組や広報ビデオというかたちだけでなく、インターネットの活用が当たり前になってきた。そして最近、さらに新たな技術の応用が加わった。AR(オーグメンテッド・リアリティ、拡張現実)技術だ。

 すでに馴染みのあるVR(ヴァーチャル・リアリティ、仮想現実)は、コンピュータによる五感への働きかけによって、人工的な現実感をつくり出す。

 一方、ARは現実のコンテンツに、現実にはない情報を付加することでインパクトを与える。いわば現実の一部を改変するわけで、具体的には目の前にある現実空間にデジタル情報を重ね合わせて表示するのだ。

 5月8日、地方自治体の広報活動向上に寄与することを目的に実施されている「全国広報コンクール」の結果発表があった。筆者は、その映像部門で審査委員を務めているが、2席に入選したのが埼玉県三芳町(人口約3万8,000人)である。

AR技術導入で「手話講座」

 同町では、全国の自治体に先駆けて広報にAR技術を導入し、広報紙『広報みよし』の写真や絵にスマートフォン(スマホ)やタブレット端末をかざすと、映像と音声が流れてくる仕掛けを施した。受賞映像は動画による「手話講座」だ。

 ここでは、手話による季節の挨拶や単語を動画で学ぶことができる。出演しているのは町内の手話サークルのメンバーだ。紙媒体での図解などでは伝えきれないニュアンスも、動画ならよりわかりやすく伝えることができる。全体が軽快で明るく、楽しい映像であることも評価された。

 また、『広報みよし』は、印刷以外、つまり動画撮影や編集をはじめARにかかわるすべての作業(取材、写真撮影、デザインレイアウトなど)を、ほぼ一人の職員が行っていることも特色だ。外部委託ではないため、ARの導入費や運営費用は0円なのである。

 もちろん、他の市町村がそのまま踏襲することはできないかもしれない。しかし、すでにこうした先進的な広報の取り組みが行われていることは、しっかりと認識しておきたい。

 ちなみに映像部門では2席だった同町だが、『広報みよし』は内容や写真のクオリティーが認められ、コンクールの最高賞である内閣総理大臣賞に輝いた。
(文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授)

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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