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『あなたのことはそれほど』実は全員「あなたのことはそれほど」という秀逸ラストが波紋

文=美神サチコ/コラムニスト
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『あなたのことはそれほど』実は全員「あなたのことはそれほど」という秀逸ラストが波紋の画像1あなたのことはそれほど』公式サイトより

 6月20日、連続テレビドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系)が最終回を迎え、平均視聴率14.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の自己最高を達成した。

 主人公の渡辺美都(波瑠)とその夫・涼太(東出昌大)、そして美都の同級生で不倫相手の有島光軌(劇団EXILE・鈴木伸之)と妻・麗華(仲里依紗)という2組の夫婦を中心に展開した同ドラマ。美都は、有島との再会を“運命”と信じて浮かれていたが、有島は基本的に家庭優先の姿勢を見せるなど、最初から2人の間には温度差があった。

 一方、涼太は美都の不貞どころか妊娠疑惑浮上後も離れようとせず、インターネット上で「狂気の沙汰」などと話題に。また、麗華も初めは夫を静観していたが、第9話のラストには幼い娘を連れて実家に帰った。

 美都と涼太とは違い、有島と麗華には子どもがいる。美都たちは離婚の選択もしやすいが、有島夫妻はそうはいかない。特に麗華は、「娘のために夫婦関係を再構築したほうがいいのか?」「では夫を許せというのか?」などと苦悩しただろう。有島は不倫を後悔していたが、それで済む問題ではないのだ。

 最終回では、有島が麗華の実家に通い続け、麗華はそれを冷ややかな目で見ていた。途中、麗華が有島に対して「私をこんなふうにさせた、あなたのことが憎いです」と告げるシーンや、それでも「愛してるよ」と口にした有島を平手打ちしたときは、憎しみの裏側に「好き」の気持ちがあるからこその葛藤に、見ているこちらも胸が痛んだ。

 有島夫妻の行く末には多くの視聴者が注目していたが、彼らは結局ヨリを戻す選択をした。そのきっかけは、有島が麗華にキスをしたことだったけれど、麗華は当然「キスされたから許した」わけではない。きっと、麗華にはこの先も夫の不倫のフラッシュバックが訪れるだろうし、有島もそれを受け止めていかなければならない。だが、2人には子どもがいて、お互いの気持ちも消えずに残っていた。そうして夫婦で「やり直す」と決めた以上は、乗り越えていくしかないのだ。

 その一方で、美都サイドは妊娠疑惑が消え、ようやく離婚の運びに。しかし、涼太が思い詰めている様子を知った美都は、「涼ちゃんがもし死んじゃったら、私耐えられない」「涼ちゃんがそんなに望んでくれるなら、私はもう一度……」と、伝えに行った。「もう一度」のあとに続くのは、復縁の話だろう。

 けれども、涼太は「それは同情でしょ? 好きとは違う。罪悪感。しかも自分のせいで僕が死んだら、自分の気分が悪いから。全部自分のためだ」と指摘し、それが「みっちゃんらしい」とも。その後、自分が美都に恋していたことを改めて認めた上で、「そして今、僕の気持ちは、みっちゃんのことはそれほど」と、言い渡した。

 同物語のタイトル『あなたのことはそれほど』をハッキリと口にしたのは涼太だったが、今までの美都の涼太に対する気持ち、また有島から美都への気持ちにも該当するだろう。もしかすると、麗華も有島に対してそう思おうとしたかもしれないし、「それほど」の後に「愛している」が続くパターンもあり得る。美都も涼太も有島も麗華も、全員が「あなたのことはそれほど」なのかもしれないという可能性を示唆した秀逸のラストは、“あなそれファン”の間に波紋を呼びそうだ。
(文=美神サチコ/コラムニスト)

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