柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第34回が27日に放送され、平均視聴率が11.2%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。前回からは1.2ポイント減少したが、今回に限っていえば裏の『24時間テレビ』(日本テレビ系)の影響が大きいように思われる。また、高橋一生演じる小野政次の死が視聴率に影響を及ぼしてくるとしたら、死の直後の回ではなく少なくとも2、3回後になるはずだからだ。
政次(高橋)の意をくみ、自ら槍を取って彼を死に至らせた直虎(柴咲)。あまりにもつらい現実が彼女の記憶を混濁させ、政次はまだ生きていると思い込んでいた。一方、遠江を侵攻していた家康(阿部サダヲ)は苦戦を強いられていた。氏真(尾上松也)がこもる掛川城なかなか落とせず、さらに浜名湖沿いでは今川傘下の大沢(嶋田久作)が徳川から領地を次々に奪い返していた。気賀の城代を務める方久(ムロツヨシ)は密かに家康のもとを訪ねて武具や兵糧などの援助を申し出るが、それを察知した大沢に城を乗っ取られてしまう。難を逃れた気賀の商人・中村屋(本田博太郎)と方久から助けを求められた家康は、中村屋の船で気賀の民を逃がしてから大沢を攻める約束をする。ところが徳川勢は約束を守らず、大沢の兵も気賀の民も見殺しにしてしまった――という展開だった。
次回予告の後に流れる「紀行」でも紹介されたが、気賀にあった堀川城が徳川勢に攻め落とされ、さほどの必然性もないのに住民たちが虐殺されたという展開は史実の通りだ。餓死者が続出したという鳥取城の兵糧攻めが『軍師官兵衛』で省略されたように、大河ドラマではあまりにもむごい戦を意図的に描かないことも少なくないが、住民の半数が犠牲になったとも言われる堀川城の戦いを、真正面から描かれたことの意義は大きい。
あくまでもドラマの評論としての視点からだが、最大の意義は「戦争シーンがしょぼい」「戦が描かれないと大河ドラマじゃない」と、毎年ひとつ覚えのような批判を繰り返す一部視聴者をだまらせたことではないだろうか。派手な戦闘シーンは楽しいし見ていてワクワクするが、戦国時代には映像映えする野戦ばかりではなく、悲惨な戦いが山ほどあったはずだ。『直虎』も「戦がなくてつまらない」とさんざん批判されたが、今回の堀川城攻めはそうした批判に対する脚本・森下佳子氏からの「だったらとことんリアルな戦を見せましょうか?」という回答だったのではないだろうか。