芳根京子が主演を務める今クールの“月9”ドラマ『海月姫』(フジテレビ系)の第1話が15日に放送され、平均視聴率が8.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、“月9”の第1話視聴率としてはワースト2位だったことがわかった。数字だけを見れば撃沈といったところだが、視聴者からは「意外と面白い!」「よかった」という声が多く、今後が楽しみなドラマだ。
『海月姫』は、漫画家の東村アキコ氏による同名コミックが原作となっているが、2014年にすでに能年玲奈(現のん)主演で映画化済み。このときは、女装が趣味の鯉淵蔵之介を菅田将暉が演じたことで話題を集めていたが、今回は瀬戸康史が演じている。映画版では蔵之介が原作コミックと“見た目がそっくり”と高評価を得ていたが、ドラマ版でも原作の世界観はそのルックスともに完璧に再現されている。
ただ、残念なことに瀬戸の演技までもが映画版とそっくりすぎて、もはや女優陣を変えてまでリメイクする必要があっただろうか? というほど。特に、芳根が演じる倉下海月は能年のオドオドした演技とまったく同じ。まやや(内田理央)、ばんばさん(松井玲奈)も映画版のときに演じていた女優陣と、動きから表情、しゃべり方までまったく同じといっても過言ではない。こうなってくると、前髪で顔が見えない設定のまややとばんばさんは、キャスティングを変更する必要もなかったのでは? とすら思えてくる。
そういう視点からみると、今回のドラマは完全に映画版の模倣である。もともと原作があるのだから、似ているのは当然といえばそれまでだが、あまりにも演技が似すぎていて、女優としての個性がまったく感じられず。ここまで同じだと女優として演じているというよりも、ただのモノマネでしかない。
また、このドラマは“クラゲオタク”の月海と、天水館で一緒に暮らす“和物オタク”の千絵子(富山えり子)、“三国志オタク”のまやや、“鉄道オタク”のばんばさん、“枯れ専”のジジ様(木南晴夏)という強烈な個性をもったオタクたちの会話が面白いところではあるのだが、そもそもドラマのなかで、名前の紹介もなければ誰がなんのオタクなのかもわからない。きっと漫画や映画を見たことがない人にとっては、何がなんだかまったく理解できなかったことだろう。
極めつけは、なぜか蔵之介が兄という設定になっていることだ。本来は、蔵之介が弟であり月海は童貞エリートの兄に恋心を寄せるのだが、ドラマではなぜか蔵之介が兄で、童貞エリートの鯉淵修(工藤阿須加)は弟。蔵之介は、月海をはじめ自らを“尼~ず”と名乗っている天水館のオタク女子に「みんなニートなんだね」と言い放っているが、原作では大学生という設定だったからこそ女装男子として自由気ままに過ごしていたのに、ドラマ版で弟が政治家秘書をしているという設定ならば「兄のお前は一体なんなんだ?」ということになってしまう。まあ、このあたりの疑問はおいおい解消されるのだろうか。
とりわけ、あらかじめ原作を知っている人から見れば面白いドラマではあったが、初見の人からみるとかなりややこしいドラマであったことは間違いない。テンポが良すぎるあまり、視聴者がおいてきぼりにならなければいいのだが。今後の展開を見守っていくとしよう。
(文=絢友ヨシカ/ライター)