広瀬すず主演の連続テレビドラマ『anone』(日本テレビ系)の第4話が1月31日に放送され、平均視聴率は6.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。前回より0.2ポイント下がり、9.2%を記録した初回以降、一貫して下がり続けている。
これまでの大まかなあらすじ紹介に続いて、「アオバ」と名乗る謎の少女(蒔田彩珠)のナレーションから始まった第4話。彼女は自分を「この世に生まれてこなかった」存在であると視聴者に紹介する。
実は「アオバ」は、るい子(小林聡美)が高校時代に妊娠して死産した、「生まれてこなかった娘」に付けた名前。るい子の中でアオバは実体化し、それ以来、親子や友人のように共に生きてきたのだという。こうしたいきさつを、実体のないアオバ自身がとうとうと語るのだから、おもしろい。
発砲事件の犯人が話を引っかき回した挙句に自殺するという“ドタバタ劇”に終始した第3話とは打って変わって、導入部からファンタジー色満載。突然、風見鶏がしゃべり出した、初回の世界観がようやく帰ってきた。るい子を優しいまなざしで見守る蒔田の美少女ぶりも相まって、第4話は好調な滑り出しを見せた。
第3話まではどこに向かっているのか、そもそも前に進んでいるのかまったく見えてこなかったストーリーも大きく動き始めた。るい子は、同居している姑のみならず夫や息子にまでも疎まれ、家を出て息子と暮らすためのお金を必要としていた。1000万円を持ち去ったのは、そのためだった。
半年ぶりに家に戻ったるい子は夫から離婚届を突き付けられるが、「最後に息子と一緒に夕食をつくらせてほしい」と頼む。幸せな時間を過ごしたのもつかの間、食卓に並んだごちそうを前に、息子の樹(武藤潤)は「食べる約束はしてないから」と自室に入ってしまう。
ハンバーグを一緒につくっていた時には無邪気な笑顔を母親に見せたのに、一緒に食べようと誘われるとサッと冷めた表情になってその場を去る光景は、ひどく残酷だ。一方ではファンタジーのかたまりであるアオバを登場させておいて、もう一方では一度離れていった人の心は、たとえ親子であっても短時間で修復できるものではないという現実を我々に突き付ける。
急速に展開が進み、おもしろさが増す
るい子が実の息子に拒絶されたのと同じ頃、亜乃音(田中裕子)も娘の玲(江口のりこ)と会っていた。「再婚するから二度と近付かないでくれ」というのが玲の用件だった。
ここは視聴者の多くが違和感を覚えた部分だろう。玲は15年前に勝手に家を飛び出したのに、なぜそれほどまでに母親を嫌っているのか。これまでの亜乃音の言動を見る限り、娘を心から愛しているものの決して差し出がましいことはしない、良き母親であったに違いない。玲に何か誤解があるのか、実は亜乃音にもまだ明かされていない裏があるのか。いずれこの部分にもスポットが当てられることになりそうだ。
ラストでは、亜乃音の夫が経営していた印刷所の元従業員であり、妻も娘もいる理市(瑛太)が玲の再婚相手であることが明かされた。思わぬところで人間関係がつながってきた! と思ったが、よくよく考えたら偶然であるはずがない。
1年前に死んだ亜乃音の夫・京介(木場勝己)は密かに玲と連絡を取り合っており、たびたび会っていたようだ。であれば、京介のもとで働いていた理市が玲の存在を知っていたとしても不思議ではない。理市が玲に近付いたのは、偽札づくりに必要な「何か」を彼女が持っていると考えたからではないかとの可能性が出てきた。
前回はただただ感じの悪い悪人だった、るい子の背景を丁寧に描くことで印象を一変させるとともに、親子関係の良しあしに血のつながりは無関係であることを描き上げた第4話。ドラマとしても、やっとおもしろくなってきた。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)