将棋界初の中学生五段に昇段した藤井聡太五段。鮮烈なプロデビュー以来、常に注目されながらも並みいる棋士を撃破して、空前の将棋ブームを巻き起こしている。そんな藤井五段の強さのワケを、『将棋世界』(日本将棋連盟)元編集長の田丸昇九段に解説してもらった。また、13日に国民栄誉賞を授与された羽生善治永世七冠との対局が17日に予定されていることから、その勝負の行方も合わせて予想してもらった。
最年少棋士の藤井聡太五段は、2016年12月のデビュー対局から勝ち続け、17年6月に公式戦で29連勝の新記録を樹立した。藤井五段の活躍ぶりは将棋界の枠を超えて社会的に注目され、盤上盤外の話題は今や社会現象になっている。
藤井五段は、連勝が途切れた後も驚異的に勝ちまくっている。17年度の公式戦の成績(18年2月14日時点)は、勝率(8割3分3厘)、対局数(65局)、勝利数(54勝)、連勝(29連勝)の記録4部門で、いずれも1位である。
藤井五段は、歴代1位の勝率(1967年度/中原誠十六世名人の8割5分4厘)、対局数(2000年度/羽生善治竜王・永世7冠の89局)、勝利数(2000年度/羽生竜王の68勝)での記録更新は難しい。ただ、3月末日までの年度内に、最多であと約10局の対局が組まれる見込みなので、勝率が8割台で60勝以上という稀有な記録をつくる可能性がある。過去唯一の例は01年度、木村一基九段の8割3分5厘・61勝。
しかし、最近の藤井五段の将棋を見ると、本来の強さに加えて逞しさと粘りが出てきたように思える。王将戦の南芳一九段との対局では、中終盤でずっと苦しい形勢だったが、粘り抜いて230手もの長手数で逆転勝ちした。また、NHK杯将棋トーナメントの稲葉陽八段、叡王戦の深浦康市九段との対局では、いずれも敗れたが160手台の激闘を繰り広げた。なお、1局の将棋の平均手数は、およそ100手である。
ともあれ、藤井五段が通算75局の公式戦で、11局しか敗れてないのはすごいことだ。その敗れた対局の持ち時間の内訳は、5時間が1局、4時間が2局、3時間が3局、1時間が2局、20分未満が3局となっている。持ち時間の短い対局を苦手とする傾向がある。
NHK杯の歴代優勝者は、最多が羽生竜王の10回。次いで大山康晴十五世名人の8回、加藤一二三九段の7回、中原十六世名人の6回、森内俊之九段および佐藤康光九段の3回と続く。いずれも名人などのタイトルを獲得した大棋士ばかりで、持ち時間が短い棋戦(NHK杯は各10分)でも強いことがわかる。
今後、藤井五段の真価が問われる実績として、NHK杯や銀河戦など短時間の棋戦で活躍することだと思う。