藤井五段の昨年の賞金・対局料総額は約700万円?
藤井五段は3月8日に行われる王将戦の予選2回戦で、師匠の杉本昌隆七段との初対局が決まっている。将棋界で師弟対局は珍しいことではない。なお、組み合わせの抽選時に予選1回戦での師弟対局は除外されるが、2回戦以降に取り決めはない。私の経験によると、師弟対局では師匠のほうが指しにくいものだ。実際に私は弟子の櫛田陽一七段に3連敗した。羽生竜王は棋士4年目に師匠の二上達也九段と対局して勝った。弟子が師匠との対局で勝つことを「恩返し」という。だが、師匠は弟子の成長をうれしく思う半面、やはり悔しいのが本音である。
日本将棋連盟は2月6日、2017年の獲得賞金・対局料ベスト10を発表した。それによると、羽生竜王は5070万円で3位だった(前年は9150万円で1位)。王位と王座のタイトルを失ったことが影響した。18年は竜王賞金(4320万円)が入るので、1位に復帰する可能性が高い。
藤井五段の獲得賞金・対局料はランク外で、公表されていない。藤井五段が今期在籍した順位戦で最下クラスのC級2組の対局料は全般的に低い。リーグ戦や決勝トーナメントに進出しないと、対局料の単価は上がらないシステムになっている。藤井五段の17年の対局数は64局とかなり多かったが、大半の対局が予選だったため、公式戦の賞金・対局料は700万円ぐらいではないかと、私は過去の経験から推定している。とはいえ、一般の会社員の年収に相当する額だ。18年には、さらなる活躍によって1000万円の大台を超すことは間違いない。
(文=田丸昇・九段)
●田丸昇・九段
『将棋世界』元編集長。著書に『実録名人戦秘話』(マイナビ)、『熱血の棋士 山田道美伝』(日本将棋連盟)、『名棋士の対局に学ぶ詰め&必死』(創元社)など、近著に『伝説の序章 天才棋士 藤井聡太』(清流出版)がある。
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