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吉岡里帆を無駄遣いする『きみが心に棲みついた』、一般企業の現実と乖離しすぎで興ざめ

文=吉川織部/ドラマウォッチャー

 吉岡里帆が初の主演を務める連続テレビドラマ『きみが心に棲みついた』(TBS系)の第9話が13日に放送され、平均視聴率は前回より0.9ポイントダウンの7.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。

 イケメンの敏腕ビジネスパーソンとして腕を振るう裏で、非道な行いを続けてきた星名漣(向井理)。匿名の告発メールがきっかけで問題が明るみに出て、社員への聞き取り調査と本人への査問が開かれることとなった。

 悪役ながら同情すべき点が多く、本来は心の弱い人間であるという複雑な役を魅力たっぷりに演じている向井は本作で評価を上げたが、だからといってドラマの中で悪人が野放しになるのもいただけない。今回ようやく星名の悪事が暴かれる展開となったことで少しはスッキリするかと思われたが、逆にツッコミどころが目立つ回となってしまった。

 最もありえなかったのは、社員への聞き取りを個別に実施せず、まるで会議のように席を並べて行ったという描写。特にセクハラ問題については、他人が聞いている場所で正直な発言などできるはずがない。コンプライアンス案件に向き合おうとする会社自体にコンプライアンス意識が欠けているという、笑うにも笑えないヘンテコな場面になっていた。ドラマ上の必要性があったにせよ、もう少し現実的な描き方があるのではないか。

 そんな席で自身満々に「(セクハラを受けた)証拠を持っています」と立ち上がり、ICレコーダーを再生し始めた飯田彩香(石橋杏奈)もちょっとどうかしている。しかもその内容と言えば、単なる痴話げんかと言うべきか、別れ話のもつれと言うか、その程度のものにすぎない。

 はっきり言って個人間の問題であって、セクハラ案件とは意味合いが違うだろう。そんなもので勝ち誇った顔を浮かべる飯田もわけがわからないが、それをほぼ唯一の証拠にして星名に謹慎を命じた会社側も相当おかしい。そもそも差出人不明の怪しいメールを社員こぞって開封し、まともに取り合う時点でヤバい会社である。

 また、最終回に向けて収束させなければならないのはわかるが、登場人物たちがそろいもそろってこれまでの流れをぶった切るように行動し始めたのも目に付いた。星名に振られてからストーカー化し、「星名さんには私しかいない」「星名さんをずっと守る」と付きまとい続けてきた飯田が急に裏切ったのもそのひとつ。何がきっかけとなったのかわからず、キョトンとしてしまった。

 第8話で飯田を「壊れキャラ」に覚醒させておきながら、すぐ次の回で正気に戻らせてしまったのもひたすら惜しい。小川今日子(吉岡)に暴言を吐き、狂ったようにバッグで殴り続ける飯田はおもしろかったが、通常モードの飯田は石橋杏奈ががんばって気の強い女を演じているだけで、全然魅力がない。おそらく、もっと早い回から石橋に壊れ演技をさせていたら、話題を集めていたに違いない。非常にもったいない。

 これまでさんざんひどい扱いをされても子分のように星名に従ってきた牧村英二(山岸門人)が手のひらを返したのも、突然すぎてわけがわからない。裏切るならもっと前に、蹴られた時とか水を掛けられた時とかタイミングがあっただろう、とツッコミを入れずにいられない。脚本が随分行き当たりばったりなのではないか。

 さて、視聴率は低迷したままだが、いよいよ次回最終回を迎える。今日子はかなり過去を克服して精神的に自立しつつあるが、吉崎幸次郎(桐谷健太)はそんな今日子に「依存する相手が(星名から)オレに変わるだけなんじゃないか」と別れを告げた。

 視聴者の間でも、「これで吉崎エンドはなくなった」「かといってこのまま星名エンドも救いがない」「今日子は誰ともくっつかず、3人がそれぞれ前を向いて歩くエンドになるのでは」など、ラストについてさまざまな予想がなされている。個人的には、星名は過去から救われていないので、なんとか立ち直るエンドであってほしいが、果たしてどうなるだろうか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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