杉咲花が主演を務める連続テレビドラマ『花のち晴れ~花男Next Season~』(TBS系)の初回が17日に放送された。タイトルでわかる通り、2005年と07年に放送され、08年には映画化もされた『花より男子』(花男)シリーズの続編という位置付け。道明寺司(松本潤)率いる「F4」が卒業して10年後の英徳学園を舞台に、新世代のキャラクターが繰り広げる「痛快青春ラブコメディー」を描くという触れ込みだ。
かつての『花より男子』は、1期目が全話平均視聴率19.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)、2期目はさらに上昇して同21.6%を記録した大人気シリーズだっただけに、TBSも今作には並々ならぬ期待をかけていたに違いない。だが、ふたを開けてみれば初回視聴率は7.4%と惨敗に終わった。話題になったのは、「回想シーンで松本潤が登場したらTwitterがつながりにくくなった」ということくらい(後にTwitter社より本件とは無関係と発表された)。裏を返せば、それ以外には特筆すべき要素がなかったとも言える。
そう断言すると、もはや書くこともなくなってしまうので、絶対に中年男性をターゲットにしていないであろう『花のち晴れ』について、あえておじさんの目から見た感想なりツッコミなりを書いてみたい。
まず、主演の杉咲花は悪くない。ある程度しっかり者で、そこそこ気が強く、正義感の強い高校生役をしっかり演じている。これがその辺のアイドルやモデル上がりの女優もどきだったら目も当てられなかったところだ。また、杉咲の婚約者・馳天馬を演じる中川大志も、さわやかなイケメンぶりとすらりとしたたたずまい、風格さえ感じさせる存在感が強烈な印象を残す。貫禄がありすぎて、高校生役の中で1人だけ浮いているほどだ。
一方、馳のライバル役となる財閥の御曹司・神楽木晴を演じるKing&Princeの平野紫耀はかなりひどい。ジャニーズタレントだからダメだと決め付けるつもりはないが、表情も声も一本調子の棒演技、しかも声がカスカスで聞き取りにくい。「学園の品格を守る」と言っている割に、育ちが悪そうで全然品格がないのも気になる。ともに白いタキシードをまとった平野と中川が杉咲をはさんでにらみ合うラストシーンでは、中川と平野の格の差が画面からナチュラルに伝わってくるようでかわいそうになったほどだ。
神楽木率いる「C5」の他のメンバーもいまひとつだ。紅一点の真矢愛莉(今田美桜)はウザイだけでかわいくないし、成宮一茶(鈴木仁)や栄美杉丸(中田圭祐)に至っては、存在感がなさすぎてモブキャラと化している。唯一、濱田龍臣演じる平海斗だけが安心して見ていられる。むしろ、濱田が中川のライバル役を演じてくれたほうが納得できた。
ひどいと言えば、杉咲の母親を演じる菊池桃子もかなりダメダメである。社長夫人から貧乏生活に落ちぶれたという設定だが、まったく役を演じられていない。アイドル時代の菊池を知っている世代から見れば納得のダメっぷりではあるのだが、連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)で上品な母親役を演じている原田知世とは雲泥の差である。
脚本もおかしな点はいろいろあるが、こういうドラマはいちいちあら探しをする類いのものでもないので、「そういうもんだ」と思えばさほど気にはならない。ただ、お金持ちの子女ばかりが通う高校なのに、主人公の父親が経営する会社の倒産情報がまったく知られていないという設定は不自然すぎた。中高生が見るドラマだからと、制作側も細かいことは気にしていないのだろう。
もうひとつ気になったのは、宇多田ヒカルが本作のために書き下ろしたという曲の使い方だ。曲はいいと思うのだが、流れる場面やタイミングがまったく合っていないために、「無駄遣い」になっている。
初回で予想以上の低視聴率をたたき出しただけに、TBSもなんらかの対策を考えずにはいられないはずだ。若手が多いだけに、キャストのリアルな成長とともにドラマも盛り上がってくる可能性は大いにある。今後の展開を見守りたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)