中谷美紀、玉木宏らが出演する連続テレビドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系)の第3話が4月27日に放送され、平均視聴率は前回より1.0ポイント上がって9.1%だった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
佐藤真弓(中谷)は、夫・秀明(玉木)のクレジットカードの明細書にホテルの宿泊代が記載されていたことから、彼の浮気を疑う。だが、見て見ぬふりをしたほうが良いのではないかと悩んでいた。一方、学校教師の茄子田太郎(ユースケ・サンタマリア)は、旅行会社の担当である真弓と住宅販売会社の営業マンである秀明が夫婦であることに気付き、今後は家族ぐるみで付き合おうと言い出す。そして、佐藤家が計画していたバーベキューに妻の綾子(木村多江)とともに半ば強引に参加してきたのだった。
話自体は良くも悪くもなく、ごく普通。特筆すべき展開もなければ、ツッコミどころ満載というわけでもない。だが、次第に役者たちの演技合戦の様相を呈していて、これはこれでおもしろくなってきた。
筆者は前回、「玉木演じる秀明のポンコツぶりを楽しむコメディーに重きを置くか、木村とユースケの怪演をひたすら楽しむサスペンスに重きを置くかのどちらかに絞ってみてはどうか」と書いたが、ひとつに絞るどころか第3話にしてその両方ともますますパワーアップ。昼間からのんきに綾子と山道を歩いていた秀明は下から真弓が追いかけてきているのに気付き、岩に隠れてやり過ごそうとしたり、あわてて斜面から滑り落ちたりと情けないことこの上ない。真弓に浮気を探られていると気付いた時も、あからさまに挙動不審になって適当な答えをしてしまう。見た目はかっこいいのに要領が悪く、中身はかっこ悪い中年の男性役に玉木はズドンとハマっている。
ユースケ演じる太郎は相変わらずネチネチしていて気持ち悪いし、何を考えているのかさっぱりわからない。秀明が浮気していると決め付け、バーベキューの席での話題にし始めるのも趣味が悪すぎる。不快感満載で、インターネット上では役柄に対する批判も少なくないが、それだけユースケの演技が秀逸である証拠とも言える。
木村は前回ラストでは涙を流しながら秀明に迫っていたが、今回はまた無邪気なかわいらしい笑顔を見せて彼を惑わす。かと思えば、キャンプ場の物陰でわざと秀明に抱きついてくる。これはかなりの性悪である。極めつきは、キャンプ場の流しで洗い物をしながら鼻歌を歌う場面。秀明がお気に入りの歌を真弓の前でわざと歌い、勝ち誇ったかのように笑顔を浮かべた。真弓ならずとも、ゾッとするシーンだ。何か底知れぬ悪意を感じる。となれば、先回言っていた「互いの家庭を壊すつもりはない」との言葉もうそだったのか。いったい何が狙いなのか、綾子の本当の姿はどこにあるのか、謎は深まるばかりだ。だんだん、木村の怪演がクセになってきた。
この3人に比べると、中谷の演技は地に足が着いていないというか、まだ固まり切っていない感じを受ける。真弓という人物がどういう人間なのか、なかなか伝わってこない。とはいえ、中谷本人も必死に探っているような印象は受ける。この先、中谷本人の中での真弓像が確立されれば、他の3人とのいい掛け合いが見られるようになるのではないだろうか。
脚本がこの先見違えるようにおもしろくなるとは思わないが、役者4人の演技合戦が評判になれば、視聴率は伸びなくても話題作となる可能性はある。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)