杉咲花が主演を務める連続テレビドラマ『花のち晴れ~花男Next Season~』(TBS系)の第3話が1日に放送され、平均視聴率は9.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、前回の7.9%から1.7ポイント上昇したことがわかった。
『花より男子』(花男)シリーズの続編という位置付けの本作。道明寺司(松本潤)率いる「F4」が卒業して10年後の英徳学園を舞台に、主人公の江戸川音(杉咲)や道明寺にあこがれる神楽木晴(King&Prince/平野紫耀)、ライバル高校のホープ・馳天馬(中川大志)らが繰り広げる「痛快青春ラブコメディー」を描く。
全校生徒に“隠れ庶民”であることがバレてしまった音。これまで「C5」として庶民狩りを指揮してきた晴は、音を助けたい気持ちと自分の役目との間で思い悩む。翌日、退学届けを出すつもりで登校した音は生徒たちに取り囲まれ、身分を偽っていたことへの謝罪を要求される。音も土下座して謝るが事態は収まらず、男子生徒の1人がバットで殴りかかろうとしたその時、天馬がさっそうと現れた――という展開だった。
この後、天馬は襲い掛かる生徒たちをなぎ倒して音を救い出し、お姫様抱っこでかっこよく去っていった。しかも、音の名義で英徳学園に5000万円を寄付し、音が退学しなくてもいいように取り計らってくれたのだった。お金持ちである上に強くて優しく、しかも高身長の美男子という完璧すぎるヒーローなのだ。演じる中川自身も相変わらずさわやかなイケメンぶりを発揮しており、テレビの前で観ているこちらとしては「こんないい婚約者がいるのに、なぜ晴なんかにかまうのか」と音に忠告したくなってしまう。
とはいえ、完璧すぎるヒーローがいるのに、別の相手とくっついてしまうのが恋愛ドラマの王道ストーリーでもある。ドラマの結末がどのようになるかはわからないが、しばらくは「素直に天馬を選べばいいのに」とやきもきしながら音の行動を見守ることになりそうだ。
なんだか晴を一方的にディスっているような書き方になってしまったが、晴役の平野が第3話で見せた演技は意外と良かった。音に認められたうれしさで顔をほころばせてジタバタしたシーンや、バイト先の先輩・紺野亜里沙(木南晴夏)の彼氏に「最高のカップル」と冷やかされて照れながら手で顔を覆う場面などは、おじさんの自分から見ても「かわいい」と思えた。
第1話と第2話は役者としての力量不足がありありと画面から伝わってきたが、だいぶ慣れてきたのだろうか。あるいは、ジャニーズタレントならファンのハートをキュンといわせるような表情や仕草はお手の物、ということだろうか。平野にセレブ感は全然ないが、完璧なヒーロー像を演じる中川との対比として、年齢相応な「普通の若者感」がにじみ出ていて悪くない。
原作を読んでいないため、ドラマがどれだけ原作に準拠しているかは知らないが、ストーリー展開も漫画の王道に沿っており、いい意味で期待を裏切らない。就寝前に軽く視聴するのにも適しており、視聴者の裏をかこうとして変にこねくり回した脚本よりずっといい。
第3話では、かつての「F4」のひとり、花沢類役の小栗旬がワンシーンだけ出演したことも話題を集めた。ただ、これについては視聴率稼ぎのテコ入れであることがあからさまで、少し興ざめである。ピンクのパーカーのフードをすっぽりかぶっているのも何だか妙だったし、卒業して10年たった高校でいきなりソファーに昼寝している設定も結構ひどい。『花より男子』の出演者をゲスト出演させて視聴者を釣る作戦も、ほどほどにしておかないと飽きられてしまうのではないか。
なお、筆者は前回のレビューで神楽木家の執事を演じる志賀廣太郎の体調が心配だと書いたが、その翌日に、志賀が体調不良で来年の大河ドラマを降板することが発表された。第3話では「小林」という役名のみ他の登場人物の台詞の中に登場したが、本人の出演はなかった。この原稿を書いている時点ではこれに関する発表はないが、無事を祈りたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)