ディーン・フジオカ主演の連続テレビドラマ『モンテ・クリスト伯』(フジテレビ系)の第6話が24日に放送され、平均視聴率が前回より0.7ポイント上昇の6.0%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。本作は、『巌窟王』の名で知られる有名小説を下敷きにしており、平穏に暮らしていた日々を突然奪われた主人公・柴門暖(ディーン)がモンテ・クリスト・真海と名を改め、自分を陥れた者たちに復讐を果たす――というストーリーになると予告されている。
第6話のあらすじはかなりごちゃごちゃしているが、簡潔に結末を書こう。真海は、青年実業家と称する安堂完治(葉山奨之)が捨て子だったことを神楽留美(稲森いずみ)に伝える。留美は真海から当時の状況と日付を聞き、安堂が自分の産んだ子であることを悟る。我が子に、小悪党の寺角類(渋川清彦)との関わりをやめさせようと決意した留美は、真海の家に侵入した2人の後を追う。寺角は突然現れた留美に驚きつつも、殴りつけて犯そうとする。安堂は寺角を止めようとしてもみ合いになり、とっさに彼を刺してしまう。留美と安堂は寺角の遺体を外へ運び出し、地中に埋めた。一部始終を見ていた真海は、まだ息のある寺角に足で土をかけ、「これでまず1人」と冷たく言い放った――という展開だった。
空き巣に入った家で大立ち回りを演じたり、悠長に留美を犯そうとしたりと、いくら何でもそれはないだろうというツッコミどころはあるが、それを除けば筋は通っている。自分たちが親子関係にあるとは知らない留美と安堂が男女の関係になるように仕向け、後から真実を本人にバラすという真海の行動は相変わらずエグいが、結果的には「母は強し」ですべてが解決された。関係を持った男が我が子であると知った留美は涙を流し始めたが、それは絶望や苦悩の涙ではなかった。むしろ、死んだと思っていた我が子が生きていたことを知った母の、喜びの涙であったのだ。
政治家の口利きで神楽清(新井浩文)と結婚した留美はずっと空虚さを抱えており、半グレのような男たちとの愛のない肉体関係で心のすき間を満たそうとしていた。夫に対する態度もいつも自信なさげで、顔色をうかがっているようだった。だが、安堂が我が子であると知ってからは態度が一変し、「カネをくれなければ悪事をバラす」と夫を脅迫するほど強さとしたたかさを持つ女性に変化した。
この展開はなかなかうまい。これまでは、本来の復讐対象ではない留美ばかりひどい目に遭ってかわいそうだったが、結果的には彼女なりに以前より幸せを感じているようだ。いくら復讐もののドラマとはいえ、あまりにも後味が悪くては観る側もキツイので、留美が不幸にならなかったことで、一安心した視聴者も少なくなかったのではないだろうか。
留美役の稲森は、表情・態度・口調のすべてを駆使して母としての強さを持つ前と後を明確に演じ分けており、とても見応えがあった。なかでも、寺角に殴られたあとが生々しく残る妖怪のような顔面で「久しぶりだね。私の顔ちゃんと見てくれたの」と夫に笑いかけるシーンは美しくも恐ろしく、背筋が寒くなるほどの迫力があった。
先週の山口紗弥加といい今週の稲森といい、中盤に差し掛かって脇役の女優陣の奮闘が光る。寂しげな表情を見せるだけで今ひとつ見せ場のない南条すみれ役の山本美月や、真海にベタベタからんではウザがられている印象しかない江田愛梨役の桜井ユキにも、この先スポットが当たることを願う。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)