ディーン・フジオカ主演の連続連続ドラマ『モンテ・クリスト伯』(フジテレビ系)の第5話が17日に放送され、平均視聴率が前回より1.2ポイントダウンの5.3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。前回も、その前の回から0.6ポイント下落しており、これで2週連続ダウンとなった。
本作は、『巌窟王』の名で知られる有名小説を下敷きにしており、平穏に暮らしていた日々を突然奪われた主人公・柴門暖(ディーン)がモンテ・クリスト・真海と名を改め、自分を陥れた者たちに復讐を果たす――というストーリーになると予告されている。
第5話で真海は、自分に罪をかぶせた張本人である入間公平(高橋克典)の家族に手を伸ばし始めた。入間が娘の未蘭(岸井ゆきの)に婚約者として選んだ外務省職員・出口文矢(尾上寛之)をマレーシアから呼び戻し、入間の父・貞吉(伊武雅刀)を殺して欲しいと持ち掛けたのだ。貞吉は殺人の過去がある悪人で、もし殺せば莫大な遺産が転がり込むとけしかけられ、出口はすっかりその気になってしまう。
だが真海はその一方で、出口を装って入間の妻・瑛理奈(山口紗弥加)に一通の手紙を送っていた。かつて入間の前妻を殺したことを黙っている代わりに、貞吉を殺せと半ば脅迫する内容だ。これを見た瑛理奈は、秘密を守るために出口を毒殺した――という展開だった。
あらすじだけでは真海は何をしたかったのか意味不明だと思うが、彼自身の解説によれば「呪われた家に住む悪魔(瑛理奈)を目覚めさせた」のだという。目覚めさせてどうするのかといえば、おそらくその毒牙を未蘭に向かわせるのだろう。
瑛理奈にしてみれば、前妻の子である未蘭がこの世からいなくなれば、自分や実の息子に入る遺産が増える。当初はそんな意識はなかったようだが、出口の殺害をきっかけにずっと抑えてきた心の闇が表にあふれ出し、悪の道を突き進むと思われる。真海のねらいは、入間に「妻が娘を殺す」という最悪の苦痛を味わわせることにあるのだろう。
見方によっては用意周到で緻密な復讐ともいえるが、別の言い方をすれば回りくどい。最後まで観れば真海の意図することはだいたい理解できたが、途中はずっと「何がしたいの?」「何の意味があるの?」とハテナの連続だった。インターネットでの反響はかなり好意的なものが多かったが、ターゲットを単純に攻撃する復讐ではないため、わかりにくい印象を与えており、これが視聴率に結びつかない大きな要因だと思われる。
また、なんとなく先が読めてしまうのも惜しい。原作を知っていれば「先が読める」も何もないのだが、原作を知らなくてもだいたい先の展開が予測できてしまう。今回さんざん匂わせたにもかかわらず、おそらく瑛理奈が未蘭を殺すことはないのだろう。未蘭は、真海の命の恩人である守尾信一朗(高杉真宙)と知り合いで、どうやら互いに心惹かれ合っているように見えるからだ。真海も守尾を巻き込むわけにはいかず、最終的には未蘭の命を助けるのではないかと予想される。別に殺されるのを望むわけではないが、あまりにも先の展開が見え見えだと、ドキドキ感が薄れてしまう。
一方、すみれ(山本美月)が真海の正体を疑っているかのような場面は見応えがあった。熱々の小籠包を食べようとする真海の口元をじっと見守っていたのは、単なる偶然でもなければ暖を思い出していたからでもなく、真海が暖と同じく猫舌であるかどうかを確かめようとしたからに違いない。
真海が事もなげにするりと小籠包を口にするのを見て、心底がっかりしたような、寂しげな目をしたすみれ。なおも真海の正体を探ろうとし、結婚しているのかと尋ねる。結婚を考えた女性がいたが、長い旅に出ている間に別の男性と結婚してしまった、とほぼ事実通りのことを答える真海。すみれも暖のことを思い出さないはずがない。たまらず真海の腕をつかみ、「真海さんは今幸せですか?」と問うと、真海は振り返ってほほえみを浮かべ「ええ、とっても」と答えた。それを聞いて一瞬絶望に似た表情を浮かべたすみれ。作り笑顔で「良かったです」と返すのが精いっぱいだった。
すみれが本当に真海の正体に気付いているかどうかは不明だが、真海が暖の事件について何かを知る人物であるとはほぼ確信している様子だ。真海は必死に「すみれは死んだ」と思い込もうとしており、復讐計画に巻き込むのもやむなしと考えているようだが、今なお暖を忘れていないすみれがこの先ひどい目に遭うようだと、視聴者としてはなかなかつらいものがある。そろそろ真海がターゲットに直接手を下す「華麗なる復讐」を見たいのだが、まだまだ先になるのだろうか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)