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『チアダン』もはや現実とフィクションの境目が消滅…超絶感動ドラマがラストへの助走開始

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 土屋太鳳主演の連続テレビドラマ『チアダン』(TBS系)の第5話が10日に放送される。広瀬すずが主演を務めた同名映画で描かれた福井中央高校のチアダンス部「JETS」の打倒を目指す福井西高校の女子生徒たちを描く青春ドラマだ。

 残念ながら平均視聴率は、第1話が8.5%、第2話が8.6%、第3話が6.6%、第4話が7.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と低迷しているが、視聴者の満足度は高く、毎回放送後には「感動した」「泣いた」といった感想がSNSなどに書き込まれている。当サイトでこれまでにも何度か書いている通り、『チアダン』は青春ドラマとしてかなりベタな部類であり、毎回チアダンス部「ROCKETS」の美少女たちがさまざまな奮闘を繰り広げ、最後には必ずわかりやすい感動のシーンがやってくる、という構成になっている。

 3日に放送された第4話は、このパターンをこれまでで最高のかたちで視聴者に見せてくれた。ストーリーの柱となっていたのは、ROCKETSがチアスピリットの大切さに気付くエピソードだ。これがどのように描かれたのか、振り返ってみよう。

 ROCKETSは校長(阿川佐和子)の取り計らいでJETSを見学させてもらい、練習方法などをマネするようになる。だが、何度も動画を見てJETSのダンスを研究していた漆戸太郎(オダギリジョー)は、JETSのダンスには技術だけでなく、胸が熱くなって力が湧いてくるような何かがあると感じていた。それを聞いた校長は、それがチアスピリットであり、それを部員たちに気付かせてやるのが顧問である太郎の役目だと励ます。

 ただ単に「ダンスがうまくなっていく話」にしない脚本には好感が持てるし、いつもニコニコしていて心が広く、なぜかなんでもわかっている校長の存在にも癒やされる。阿川が演じる「さばさばした、人のいいおばちゃん」というキャラクターは『陸王』(TBS系)で演じた工員役と共通しているが、これが実にハマっている。

 さて、折よく地元の商店街からROCKETSに出演依頼が来ていた。部員たちは「余裕がない」と渋るが、良い機会になると考えた太郎は強引に出演を決めてしまう。そして迎えた当日。ROCKETSは、新たにつくったそろいの衣装で商店街の祭りのステージに立ち、THE BLUE HEARTSの『人にやさしく』に乗せてパワフルなダンスを披露する。当初はパラパラと数えるほどしかいなかった観客も次第に多くなり、子どもたちはステージ前にずらりと並んで踊り出す。曲が終わると観客から温かな拍手と歓声が湧き起こり、会場全体が笑顔に包まれていた。

 そのなかには、わかばをかばったせいでチアリーダー部から排除されてしまった麻生芙美(井原六花)や、試合での失敗がきっかけで休部していた野球部の元エース椿山春馬(清水尋也)の姿もあった。笑顔満開でエネルギーをほとばしらせるかのように踊る部員たちと、それを応援する観客の姿、感動して涙を流す芙美の様子などが交互に映し出され、見ているだけでどんどん心が高ぶり、じんわり胸が熱くなるのを感じる。ドラマに感動しているのか、すさまじい練習を重ねて撮影に臨んでいる若手女優たちに感動しているのか自分でもよくわからないが、おそらくその両方が重なり合って胸に迫ってくるのだろう。「踊ったらみんなが感動した」という超ベタな感動シーンに、またしてもまんまとやられた。

 祭りからの帰り道、部員たちは「あんなに感謝されると思わんかった」「誰かに喜んでもらうのってこんなにうれしいんやの」と口々に喜びをかみしめる。部長のわかばが「たとえダンスがどんなにうまくなっても、誰かを心から応援する気持ちがなかったら意味ないやがのう」と、きれいにまとめるのは少々できすぎだが、彼女たちの成長をわかりやすく視聴者に提示していると思えば全然許せる。

 ダンスに勇気づけられた芙美と友人の梶山カンナ(足立佳奈)がROCKETSに入部し、春馬は野球部の練習に復帰したという結末も、素直に「良かった」と思えるものだった。「リアリティーがない」という批判はこのドラマにはあまり意味がない。「どうせそうなるんだろうな」「そうなればいいのに」と思った通りに話が進むベタな青春ドラマ感こそがこのドラマの持ち味だからだ。

 第4話では、過去の事件がきっかけで誰にも心を開かず、孤独を好んでいた柴田茉希(山本舞香)がようやく部員たちを信じるようになり、初めて笑顔を見せたというエピソードも描かれた。途中で茉希と部員たちの対立が始まった時には「またその話を繰り返すのか」とうんざりしかけたので、今回できれいに解決させたのは良かったと思う。ヤンキー感がリアルに怖かった山本が最後にはかわいい笑顔を見せたのも、ギャップ萌えを感じさせる良い演出だった。

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