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吉田潮「だからテレビはやめられない」(8月2日)

ドラマ話題作連発のテレ東新作、上出来だが “腹黒さ”と“残念さ”を禁じ得ないワケ

文=吉田潮
ドラマ話題作連発のテレ東新作、上出来だが “腹黒さ”と“残念さ”を禁じ得ないワケの画像1「たべるダケ 公式サイト」(テレビ東京HP)より

 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 ここ数年、テレビ東京のドラマが快進撃を続けている。死刑囚と看守の物語を描いた『モリのアサガオ』、オジサンが食の愉しみをつぶやきまくる『孤独のグルメ』、低予算を逆手にとった冒険活劇『勇者ヨシヒコ』シリーズ、ド直球エロ&青春ファンタジーの『みんな! エスパーだよ!』などが、主に深夜枠で話題を呼んできた。テレビドラマ界の隙間産業的立ち位置である。芸能人でたとえると、高田純次みたいな感覚。

 なので、つい過剰な期待をしてしまった。三白眼とおちょぼ口が魅力の新井浩文が主要キャストの一人と聞けば、独特の世界観があって、そらもう面白いに違いない、と。鼻息荒くしてテレビの前に座って観たのが『たべるダケ』(毎週金曜日深夜0時52分~)である。

 新井演じる柿野義孝は、3度の離婚で3人の元妻たち(霧島れいか、井上和香)に慰謝料を払い続ける、うだつのあがらない男だ。会社に勤め、深夜は交通整理のアルバイト。にっちもさっちもいかない貧乏暮らしで、自殺しようとしてもそれすらうまくいかない。ところが、ある日出会った不思議な女(後藤まりこ)のおかげで、前向きな人生を取り戻す――という物語。

 新井を軸に、その周囲の人間たちが次々と後藤のおかげで前向きになっていく。後藤の役どころは食べるだけ。ほとんどしゃべらず「いただきます」程度のセリフだ。その食べる姿に人々は癒やされ、元気づけられ、ポジティブになっていく。

 が、しかし。後藤の食べるさまがどうも解せない。まったくおいしそうじゃないし、むしろ食べ方が汚い。あごを上げて、食べ物を口に運び、口の端からは食べ物をはみ出させる。エロティックと謳う割にちっともエロくない。感じ方は人それぞれだろうけれど、少なくとも私は少女好きのための成人向けビデオの口元をアップにして見せられているような不快感を覚えた。念のため、周囲の男女4人に確認したが、全員が口を揃えて「食べ方に品がない」との回答。私だけじゃない、この不快感は。

 これも個人差があるだろうけれど、後藤は黙って普通の顔をしていれば美人の部類だ。小鹿っぽいキュートさもあり、私の好みの顔でもある。それなのになぜわざわざアヒル口・舌足らずの演出なのか。服装といい、食べ方といい、完全に幼児性の追求。口角からしたたる汁を舌なめずりする映像をわざわざスローで見せられてもねぇ。食べ方で言えば、新井の勤務する会社の高飛車OL役・石橋杏奈や元妻の井上和香のほうがよっぽど美しくておいしそうでエロい。

 なんだろう、このモヤモヤ。タレントのYOUを観ているときと同じ感覚。それなりの年齢の女が「幼さ」や「コドモっぽさ」「無邪気さ」を売りにする腹黒さ。女が「大人の女性であること」を自ら拒否することで特定の層(少女好き気質が強い日本人)を取り込もうとするあざとさ。なんだかすごく残念で仕方がない。後藤もせっかくの主演なのに、ミソついちゃった印象だ。不憫である。
 
 ただし、物語の広がり方はとても面白い。救いようがないダメ男・新井を軸に広がる人間関係が今後どんな展開になっていくのかは楽しみだ。1話ずつその相関図が広がっていく模様は、連ドラの醍醐味でもある。後藤の食べるシーンを除いては、今後も注視していきたいところである(後藤の『ビルマの竪琴』水島コスプレはうっかり大笑いしたけどね)。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

吉田潮

吉田潮

ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)で「TVふうーん録」を連載中。東京新聞でコラム「風向計」執筆。著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)などがある。

Twitter:@yoshidaushio

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