窪田正孝が主演を務める連続テレビドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)の第10話が10日に放送され、平均視聴率は自己最高だった第8話と同じ13.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。
このドラマは、レントゲンやCTで病変を写し出す放射線技師・五十嵐唯織(窪田)が「病の写真家」として、目には見えない患者の病気を見つけ出し、命を救っていく医療ドラマだ。五十嵐が勤める甘春総合病院の放射線技師や医師たちは、そろいもそろってクセ者ばかりだが、話が進むにつれてそれぞれの長所が描かれたり、実はいい人であることが明らかになったりする。
また、いくつかの回では、あまり知られていない病気やその診断法などを題材として取り上げており、「勉強になった」「検診を受けようと思った」といった反響も少なくない。外科医ドラマではないので手術シーンもほとんどなく、根っからの悪人も出てこない。取って付けたような恋愛シーンもほぼ皆無だ。週の初めから見るドラマとして、非常に「見やすい」ことが支持されているといえよう。
第10話は、骨折しにくいはずの赤ちゃんが、なぜか短期間のうちに骨折を繰り返す――という不可解な事例がテーマとなった。病院関係者は当然のごとく虐待を疑うが、「家の中で転んだくらいしか心当たりがない」と話す母親が嘘を言っているようには見えなかった。
そんななか五十嵐は、赤ちゃんが卵アレルギーであることから、ビタミンD不足による「くる病」の疑いを指摘。赤ちゃんの母親は紫外線を恐れるあまりに我が子を日光から完全にガードしており、そのことも体内でのビタミンD生成を阻害していたことがわかる。
劇中では、紫外線の害を恐れるあまりに子どもを極力日光に当てないようにする親が増えた結果、子どものくる病が増加しているとの説明もなされた。昔は「子どもは太陽の下で遊べ」と推奨され、みんな真っ黒になって外で遊んでいたが、今は「紫外線は人体にとって百害あって一利なし」との認識が広まり、なるべく日光を浴びないのが良いと多くの人が思っている。だが、今回のエピソードでは、そんな両極端を避けて、適度に日光に当たるほうが良いとの見解が示された。一般に広まっている誤った認識に一石を投じる、非常に意味深いエピソードだったのではないだろうか。
第10話では、病気になって院長を辞したことくらいしか明かされていなかった甘春杏(本田翼)の父・甘春正一(佐戸井けん太)も本格的に登場。杏によれば正一はうつ病を患っているというのだが、突然病院に姿を現した正一はどうも様子がおかしい。おかしいというより、うつ病に見られる症状と少し違うような気がする。と思っていたら、ラスト付近で五十嵐が別の可能性に気づいた。「低髄液圧症」もしくは「脳脊髄液減少症」という病気だ。
最終回となる次回の予告映像には、困難な正一の手術を執刀しようとする杏に向かって「替わります。僕がやります」と告げる五十嵐の姿があった。技師として働く五十嵐が実は医師免許を持っていることは杏や技師長の小野寺(遠藤憲一)にはバレているものの、他の医師や技師たちは知らない。五十嵐がいつ自分の正体を明かすのかは当初から注目されていたが、最終回の最高にかっこいい場面で天才的な技術を発揮するという、カタルシス満点な展開が待っているようだ。期待が高まる。
一般的にはほとんど知られていない脳脊髄液減少症が最終回のテーマとなることについては、歓迎する声が多い。実際にこの病気を経験した人やその家族や友人、医療関係者などを中心に「正しく診断されないことも多く、知名度もないので周囲に理解されにくい。多くの人にぜひ知ってほしい」「このドラマで正しく認識されるとうれしい」「月9で取り上げられる事で多くの人が正しく理解してくれると患者も周りも救われる」といった声がネット上で多く上がっている。
ドラマとしては、「序盤に中途半端に描いてみた広瀬裕乃(広瀬アリス)による五十嵐への片思いはどうなったんだ」とか、「結局杏の原因不明の頭痛はなんだったのか」「そもそも五十嵐が医師免許を持っていることを隠さなければならない理由がよくわからない」「医師が大病院に誘われて一度はその気になるが、最後には甘春総合病院のスタッフの素晴らしさに触れて残るというパターンを2週連続でやるのは能がないのでは」など、ツッコミどころは少なくない。
実際は初回から登場している診療部長・鏑木安富(浅野和之)が五十嵐たちに一言ヒントを与えただけにすぎなかったのに、「もう一人の天才が現れる」とあおった第10話の予告についても「あれは詐欺予告だったのでは」「天才って鏑木先生?前に五十嵐に誤診を指摘されていたのでは?」と視聴者から批判の声が上がっている。
とはいえ、軽く視聴するドラマとしては十分まとまっているし、病気について勉強になるのも確かだ。これで最終回に最高のカタルシスが待っているとなれば、見ない理由はない。最終回が楽しみだ。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)