なぜ、このような事態に陥ってしまったのだろうか。スポーツライターは次のように分析する。
「90年代後半の巨人打線のように、大砲ばかり並んでしまったことによる弊害が出ています。グリエル、筒香、ブランコ、バルディリスと続く打線は一発もあるし、相手投手からしたら脅威なのは間違いありません。しかし、ランナーが出ても、盗塁やエンドランといった小細工が仕掛けられず、打者に期待するしかありません。そんなに連打ばかり打てるわけではないので、停滞してしまうのです。9月はチーム全体で135安打を放ち、48得点を挙げていますが、1点を取るためには約3本のヒットを打たなければならない計算で、効率の悪さがデータにも表れています」
長打の怖さはあるものの、進塁打を打てない選手が並ぶことで、細かい野球ができなくなったというわけだ。
盗塁王にも盗塁させない受け身采配
「梶谷隆幸が3番の頃は、梶谷が出て盗塁して、ブランコがタイムリーというシーンが何度も見られました。ワンヒットで1点を取る野球をできていたのに、今はそれができないのです。梶谷を3番や6番あたりに置くのも、ひとつの手でしょう。たとえ打てなくても、併殺崩れなどでランナーに残れば、盗塁するなどの仕掛けができます。また、自力でのクライマックスシリーズ進出はできなくなりましたが、可能性は残っているので負けられない試合が続いています。そのため、中畑清監督の采配も一層、手堅くなってきています。梶谷は、主に3番で起用された8月に9盗塁。9月はずっと1番で、4盗塁。確かに出塁率は落ちていますが、ランナーとして出た時は、もっと積極的に走らせてもいいと思います。
実は、こんなデータがあります。今年、梶谷は1番で32試合に出場していますが、そのうち初回にヒットもしくは四球で、無死一塁を作ったケースは9度。そのすべてにおいて、中畑監督は2番打者にバントをさせています。一死二塁と得点圏に走者を進めて、相手にプレッシャーをかける作戦です。9月は、そのようなケースが5度ありますが、得点に結びついたのは2度。確率的には悪くないですが、立ち上がりの一死目を楽に相手投手に与えてしまうのは、もったいない気もします。特に、四球で歩いた時はなおさらです。
9月16日の中日戦では、3点リードされた1回裏の無死一塁でも2番打者にバントさせました。これはあまりにも、もったいないものでした。梶谷は盗塁成功率82.6%とかなり高く、セ・リーグの盗塁王です。1回から果敢にチャレンジさせてもよいと思います。仮にバントをするにしても、もう少し投手を揺さぶりたいところです。今は、あまりに見え見えのバントばかりです。元気のない打線だからこそ、1点を確実に取りにいく以上に、ビッグイニングを狙いにいってほしいです」(同)
負けが込むと、受け身の姿勢になりがちだが、中畑監督には大胆な采配も期待したい。
(文=編集部)