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阪神、なぜタイトル獲得選手続出でも優勝できない?人件費高騰必至で財政事情に懸念?

文=美山和也/スポーツライター
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 今季のプロ野球でセントラル・リーグのペナントレースは読売ジャイアンツの優勝で幕を閉じたが、ジャイアンツの優勝マジック点灯に呼応するかのごとく始まったのが、阪神タイガース・和田豊監督の後任人事をめぐる「トラのお家騒動」だ。確かに、2年連続でペナントレース終盤に失速するという醜態を演じたが、最終的には2年連続2位となり、来年も和田監督の続投が決定した。

 あるプロ野球解説者は「今季は西岡剛をはじめとした主力選手の故障もあり、終盤戦の勝負どころで打撃好調の今成亮太が右脇腹痛によって欠けるなど、和田監督の采配ミスとは言い切れない部分もある」と擁護するが、和田監督の采配に疑問を呈する声は収まらない。

 その理由は、主力を欠いたとしても十分に戦えるだけの戦力があるからだ。投打の個人タイトル争いを見てみると、阪神の選手層の厚さを感じられるだろう。

 例えば、打撃部門には「打率」1位のマートンと7位の鳥谷敬、「本塁打」4位と「打点」1位のゴメスがいる。投手部門では「勝利」「奪三振」で1位のメッセンジャー、「奪三振」2位の藤浪晋太郎、「セーブ」1位の呉昇桓、「ホールドポイント」1位の福原忍と5位の安藤優也などが上位に名を連ねた。

 マートンとゴメスが打撃部門でタイトルを獲得し、投手部門でもメッセンジャーが2冠、呉と福原は初タイトルを獲得した。しかも、同一チームの外国人選手が投打のタイトルを獲得するのは、2008年のジャイアンツのクルーン(セーブ王)、ラミレス(打点王)以来となり、所属外国人選手全員がタイトル争いに絡んだのは、史上初の快挙である。

 日本球界に適応できる助っ人を見抜いたトラ渉外担当者の眼力も再認識させられるが、一方で球団フロントが「これだけの戦力を揃えながら、なぜ勝てないのか」と思ったとしても、不自然な話ではない。

阪神選手は軒並み昇給?

 しかし、こうした個人タイトル争いで活躍する選手が多いにもかかわらず優勝しなければ、球団経営はリスクを負うことになる。タイトル獲得選手はもちろん、上位に食い込む成績を挙げた選手も、当然昇給提示の対象となる。

 在阪スポーツ記者は、次のように語り、阪神の今オフの財政事情を懸念する。

「米大リーグ・アスレチックス傘下2Aとの契約が切れる中島裕之、国内フリーエージェント(FA)権を取得した金子千尋(オリックス・バファローズ)、平野佳寿(同)、7年連続50試合登板を達成した宮西尚生(北海道日本ハムファイターズ)の獲得調査を進めており、ジャイアンツ、福岡ソフトバンクホークス、横浜DeNAベイスターズとのマネー戦争は避けられません。チーム内にも国内FA権を取得した西岡、能見篤史がおり、慰留するための費用捻出が必須です」

 タイトルを獲得したマートン、ゴメス、メッセンジャー、呉、福原の昇給だけではなく、2年連続2ケタ勝利を挙げた藤浪も大幅増が確実視されている。3年契約の最終年を終える新井貴浩以外、阪神選手は軒並み昇給対象といっていい。

 これだけの選手がタイトルを獲得しても優勝戦線から脱落するあたり、トラは“我が道を行く”といったところか。
(文=美山和也/スポーツライター)

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