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碓井広義「ひとことでは言えない」(4月21日)

かつてのテレビは、なぜ面白かったのか “本物”の番組は、とてつもない力を持っている!

文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授
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 また『夜はクネクネ』(大阪・毎日放送)の制作チームは、街で偶然出会った素人にカメラを向け、そのまま自宅までお邪魔したりしていた。収録の夜は毎回、街の中を複数のカメラマンや照明用のバッテリーを背負った技術スタッフたちが練り歩く。ちょっとした大阪名物だった。

 素人と話をするのは、角淳一アナウンサーとタレントの原田伸郎さん。もちろん台本もなく、すべての展開はその場の流れ次第だ。ロケも何時に終わるのか、皆目わからなかい。そんな制作のプロセスも番組の中に取り込んでいく手法は、まさにドキュメント・バラエティーだった。

本物をつくる

 尾道の食堂では、制作者たちの奮闘ぶりがテレビから流れていた。しばらくは当惑していた店主夫妻も、途中から楽しそうに視聴している。

 今この瞬間、全国のテレビ局で放送されているはずの同じ番組を、自分も旅先で見ず知らずの人たちと一緒に見ていることの不思議。「つながり」や「共有」といった大仰な話ではないが、テレビが持つ、何かとてつもない力に触れた体験だった。

 あれから30年。社会もメディアも大きく変化した。もちろんテレビも例外ではない。しかし、どんなに時代が変わっても、人の心が激変したとは思えない。何に笑い、何に泣き、何に感動するのか。その基本的な部分は崩れていないのではないか。目指すは、偽物ではなく本物をつくること。表層ではなく本質を伝えること。テレビだからこそ可能なトライの中に、このメディアの明日があるはずだ。
(文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授)

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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