2021年3月26日からNTTドコモが提供しているデータ通信大容量の格安料金プラン「ahamo」に、いまだに乗り換えないドコモユーザーは意外に多い。ahamoは月額料金2970円という安さにもかかわらず、データ通信量が月20GBまで使用可能という大容量で、なおかつ5分以内の通話は無料というおトクなプラン。オンライン限定の申し込みとなっているため、デジタルネイティブ世代の若者をターゲットにしたプランであることが窺える。
対して、ドコモの従来プランである「ギガプラン」では、月額料金がプランやデータ通信量によって幅広く変わる。ギガプランのなかの小容量プランとなる「ギガライト」を見てみると、月1GBまでのデータ使用量だとしても月3465円もかかる。またギガプランでは、5分間かけ放題も月770円かかるため、ahamoに比べると割高感があるのだ。
ahamoの契約者数は昨年3月に300万人を突破し、わずか1年間で飛躍的に伸びた料金プランではあるのだが、ドコモ全体の契約者数は8000万人超(1人複数契約含む)。データ通信、通話料金に関してアドバンテージを持つahamoへの乗り換えは多くのユーザーにとっておトクに思えるのだが、ahamoに乗り換えていないドコモユーザーのほうが圧倒的に多いのが実情なのである。
いったいahamoへと移行しない理由とは何なのだろうか? スマホ業界に詳しいライターの白根雅彦氏に事情を聞いた。
ギガプランにはおトクな割引がたくさんあった
ドコモはahamoについて「シンプル! かんたん!」「中~大容量のシンプルプラン」と謳う一方、ギガプランについては「家族でおトク充実サポート」「小容量~大容量まで、さまざまな使い方に合わせて選べます」と宣伝。それぞれ単身者の若者向け、家族向けというターゲット層を明確に意識して料金プランを設定しているといえる。
「ahamoは月20GBまでの通常プランが2970円、100GBまで使える『大盛りオプション』が4950円となっており、いたってシンプルな料金構成。対してギガプランは、5G、4Gでそれぞれプランが分かれており、そこから大容量の『ギガホプレミア』、1~7GBまで使った分で料金が変化する『ギガライト』の2つに分類されるのでやや複雑。料金はギガライトでは5G、4Gどちらも3465円~6765円、ギガホプレミアは5Gが7315円、4Gが7205円となっています。ギガホプレミアは、5Gだとデータ通信量無制限、4Gだと60GBまで使用可能となっているのですが、月3GBまでのデータ通信量でしたら1650円値引きされます」(白根氏)
月々にかかる料金を確認すると、ahamoのほうがわかりやすい料金設定となっているし、何より単純に金額が安い。料金設定が複雑なギガプランに比べ、若者であれば手っ取り早くて使いやすいahamoに手を伸ばしたくなるだろう。
「ギガプランはデータ通信量が少なかったり、各種割引を駆使したりすることで、かなり料金を抑えられるんです。たとえば、ギガライトだと1GB未満の使用であれば最安で2178円とahamoの通常プラン以下の金額にできることも。毎月の支払いをdカードにする『dカードお支払割』、『ファミリー割引』で3回線以上契約する『みんなドコモ割』を適用することでこの金額まで下げられます。また、1GB以上の利用でも光回線『ドコモ光』を契約して割引になる『ドコモ光セット割』を駆使すれば、最大1100円も割引となるのでおトクです。なおそれらの割引を5Gのギガホプレミアにも当てはめることができるので、月々のデータ通信量が3GB未満であれば3278円となります。
そのため、ファミリー全体でギガプランに契約し、かつデータ通信量も多くない家庭であれば、実はギガプランのほうがおトクなんです。また家族間でしたら通話も無料ですので、緊急時でも料金を気にせず連絡を取ることができるでしょう」(同)
やっぱり一人暮らし世帯にはahamoがおすすめ
家族全体がドコモユーザーでネット回線もドコモと契約している家庭ならば、たしかにギガプランのほうが料金的にはおトクになることも多いのだろう。こうしたさまざまな割引を加味すると、ギガプランからahamoに移行しない理由も頷ける。
「ただ、これはすべての要件を満たしたドコモユーザーファミリーに限った話であり、単身者で新規契約するのであればahamoのほうが大容量で料金もお安めなので、はるかにおトクです。たとえば、子どもが一人暮らしするとして、Wi-Fi未接続下で動画やゲームをしたり、LINE通話などで頻繁に連絡を取り合うのであれば、データ通信量1GBなんてすぐに到達してしまうのでahamoに切り替えたほうがよい場合もあります。また、ギガプランでは家族間通話が無料であるとお伝えしましたが、今どきLINEなどで通話もしてしまうためキャリア番号で通話することも少ないでしょうし、ahamoも5分以内の通話であれば無料となるので、通話に関してはahamoにデメリットがあるとはいえないと思います」(同)
また、固定インターネット回線を引かない家庭はahamoのほうがおトクになる場合もある。
「ahamo大盛りにすれば、月100GBまで使い放題ですし、ゲームや動画だけの使用であればそうそう上限が来ることはありません。そしてテザリングもできるため、パソコンにつなぎ簡単なメールをやり取りするぐらいでしたら問題なく行えます。ですからネット回線を引く場合に比べ料金が下がる可能性は大いにあり得るんです。もちろん回線の強さがパフォーマンスに直結するZoomやオンラインゲームなどをよく利用する人は、固定回線のほうがよいでしょう」(同)
セット割引の恩恵を受けず、データ通信量が20GB前後の人からすると、圧倒的におトクなahamoは、若者以外にも次のようなユーザーにおすすめだという。
「現状、若者がターゲットのahamoですが、従来のギガプランを利用している独身の方や単身の高齢者の方にもおすすめのプランです。キャリアメールの継続利用もできますし、SIMもすべて郵送で届くのでキャリアショップに行って契約するよりも手間がかかりません。
ただ高齢者などは、オンライン上の手続きに慣れていない人もいるので、ドコモも高齢者層をもっと取り込めるようなアピールや、UX/UIの向上に努めるべきでしょう。ドコモとしてはahamoユーザーが増えれば、ショップにかけるコストを減らせますし、その分ほかのサービスに投資できるため、より幅広い世代に利用されるようなサービスを目指していくことは考えられます。昨年6月からApple Watchをahamoで利用できる『ワンナンバーサービス』を開始したことに代表されるように、ドコモは新サービス追加に前向きだと思われるので、引き続きサービス向上を図っていくのではないでしょうか」(同)
ギガプランからahamoへの乗り換えは、必ずしも全員がおトクになるワケではないものの、単身者、若者からするとたしかにおトクになるケースが多いようだ。もしギガプランからahamoへの乗り換えを検討しているのであれば、セット割引や回線の状況をきちんと確認したうえで、乗り換えすべきか検討することをおすすめする。
(取材・文=文月/A4studio、協力=白根雅彦/ITライター)