NTTドコモが提供する新料金プラン「ahamo」が3月26日からついにスタートした。「低価格プラン」と謳われるだけあり、本当にお得かどうか気になっている人も多いだろう。「6割以上のスマホユーザーがahamoなどの新料金プランに乗り換えない」という調査もあった(3月12日付マイナビニュース記事『ahamoなどの新料金、「乗り換えない」が6割超 全国4万人調査』)。
だが、結論からいえば、多くの人にとってahamoはオススメだ。特に、すでにドコモのプランを契約している人は乗り換えたほうがお得。筆者も事前エントリーをすぐに済ませ、サービス開始を指をくわえて待っていた。
では、なぜahamoはお得なのか。ahamoを従来のプランと比べながら見ていこう。
既存プランに比べて圧倒的にお得
まずahamoの訴求ポイントは以下のようになっている。
(1)データ容量:月20GB
(2)国内通話料金:5分無料
(3)海外ローミング:月20GBまで無料
(4)料金:月2970円(税込み/以下同)
しかも、回線は5Gにも対応している。同じような条件をahamo以外のドコモの既存プランで実現しようとすると、この価格では極めて難しくなる。5Gにも対応し、データ容量が20GBとなると、比較対象になるのは「5Gギガライト」か「5Gギガホ」になるだろう。
5Gギガライトの場合、上限の7GBを使用した場合、6765円になる。「ドコモ光割」などの割引サービスを駆使しても4378円だ。データ容量が無制限になる5Gギガホの場合には、基本料金は8415円。割引サービスをフル活用しても最初の6カ月は4928円、7カ月目以降は6028円となる。
ちなみに、筆者が利用している「ウルトラデータLパック」(新規受付終了)はデータ容量が20GBだが、6600円。しかも5G回線は使えない。既存のプランとahamoを単純に比較できないが、データ容量を見ると十分お得であることがわかる。
毎月のデータ使用量が多い人には微妙かもしれない。ただし、「毎月のデータ容量は20GB以下」の人はahamoに乗り換えたほうがお得だ。また、自宅にWi-Fi環境がある人や、職場で自由にWi-Fiが使える場合には、アプリのアップデートや動画配信サービスのダウンロードなどを事前に済ませておけば、データ容量の消費を抑えることができる。
さて、ここでお伝えしたギガホなどの料金は、ahamoでいう(1)データ容量20GBの部分に当たる。つまり、既存のプランでは、ここに「通話プラン」も追加しないといけない。ahamoの「(2)国内通話料金5分無料」の条件は、一般のプランでいうところの「カケホーダイライトプラン」に当たる。料金は1870円だ。通話プランだけで1870円と考えると、データ容量20GBと5分の通話無料が付属しているahamoがいかにお得かわかるだろう。
また、(3)の海外ローミングも、一般のプランで使用すると追加料金がかかるもの。この海外ローミング20GBは、国内利用分の20GBと合わせたものになるので注意が必要だが、主な観光スポットや一定規模の都市にはWi-Fiが用意されている。また、海外でガッツリとデータ通信を使うなら現地でSIMカードを購入したりすればいいので、そこまで気にするものではないだろう。「オマケ」として(3)が付いていると思えば、十分お得だ。
低価格とはいえ「安かろう悪かろう」ではない
さて、我々は「低価格」といわれると「安かろう悪かろう」というイメージも持ってしまう。携帯電話のプランでいえば、「回線がショボい」とか「通信が遅い」といったところだろうか。たしかに、「格安SIM」と呼ばれるサービスは、そうであった。道路にたとえるとわかりやすいが、格安SIMの“道路”(回線)は、車線が少ない。すると、混雑する時間帯には“渋滞”しやすくなる。
しかし、ahamoは「格安SIM」でも「サブブランド」でもない。ドコモユーザーは、サービス開始当初は他社への移行のようにMNP(ナンバーポータビリティ)が必要だが、6月にはスムーズな契約変更が予定されている。
サブブランドではないため、回線の品質も変わらない。4Gだけでなく5G回線も使用可能。「時間帯による速度制限はない」とも公式にアナウンスされている。実は、筆者がahamoを推す大きな理由はここにある。
ahamoと類似するサービスとして、auは「povo」を提供する。povoは、「一定期間内に大量のデータ通信のご利用があった場合、混雑する時間帯の通信速度を制限します」とアナウンスされている。また、ソフトバンクの「LINEMO」には「通信が混雑し、または通信の混雑が生じる可能性がある場合、ネットワーク全体の品質を確保するため、通信の種類及び内容にかかわらず、同じ設備を利用している通信量が多い回線から順に、通信速度を他の回線と同じ水準まで一時的に制御する場合があります」と注意書きがある。
どこまでの制限なのかはまだ明らかになっていないが、携帯電話にとって「つながりやすさ」は肝だ。このつながりやすさを確保するために格安SIMを避けてきた人も多い。「auやソフトバンクだから速度制限はなさそう」というイメージもあるだろうが、このポイントには十分に注意をしないといけない。筆者がauやソフトバンクのユーザーであれば、povoやLINEMOへのシフトは、少し様子見をするだろう。
その点、ahamoには制限がないとしっかり記載されている。従来の格安SIMのような価格帯で「つながりやすさ」が確保されているとなると、やはり移らない手はない。
ただし、「安いのには何か理由があるはず」と思われるだろう。たしかに理由はある。それは契約や手続きが「オンライン限定」となることだ。
安さの理由はオンライン限定。「窓口や電話でのサポートなし」だが、そもそも必要?
ahamoは「オンライン限定」にすることで、格安料金を実現している。ここがネックになっている人も多い。だが、冷静に考えると、そこまで重要なことではないのではないか。
というのも、すでに契約プランの変更はネット上から行えた。オンラインで変更できていたとはいえ、契約プランの組み合わせによっては店頭に赴かないといけないケースもある。むしろ、筆者の場合はあのドコモショップで永遠と待たされるのが苦痛で仕方なかった。それがオンラインで完結するとなると、好きな時間に好きな場所からできるので、むしろウェルカムだ。
筆者の場合は、ドコモ光を利用し、すでに新規受付を停止しているプランから新規プランに移ろうとし、さらに端末割引も受けようとして……という複雑なことをしようとした結果、店頭に足を運ぶ必要があった。その点、ahamoはシンプルなプランなので、手厚いサポートを受けないといけないケースも減っていくだろう。
また、ガラケー時代と違って、「端末が壊れたから」といって携帯ショップに駆け込むこともなくなった。日本人に圧倒的に人気のiPhoneも不具合がある場合には、ドコモショップに問い合わせても、アップルストアなどに行くことを促される。
と、ここまでの内容を読んで「だったら大丈夫だ」と思う自信がある人はahamoを利用すればいいと思う。反対にオンライン限定と聞いて「ちょっと心配だな……」と感じる人は、ahamoはやめたほうがいい。その“安心料”をどう捉えるかの問題だからだ。
これは旅行サイトをイメージすればわかりやすい。JTBなどの窓口に行ってスタッフのサポートのもと選択していくのか、楽天トラベルなどを利用するかの違いだ。筆者の場合は安く済ませたいので、ネットの旅行サイトを愛用している。
「既存の割引サービス」は適用外。すると、家族の割引がなくなってしまう?
ahamoはとことんシンプルなプランなので、既存の割引サービスが適用されない。すると、「ahamoによって安くなる」と言われても、「ファミリー割引が適用されなくなり、家族全体で見ると安くならないのでは?」と思われるかもしれない。
ここで気になるのがahamoに移行することで、“家族に与えてしまう影響”だろう。たとえば、「ファミリー割引」には家族間通話無料の特典が付いてくる。この場合、ファミリー間であっても「ahamo回線→非ahamo回線」の発信は無料ではなくなる。しかし、ahamoには「国内通話料金5分無料」が付いてくる。5分以上通話する場合は注意が必要だが、LINEなどのネット通話を使えば通話料はかからない。また、「ギガプランなどを契約中の回線→ahamo回線」への発信はこれまでどおり無料だ。
そして、家族間の割引サービスとして意外と大きいのが、「みんなドコモ割」だ。これは同一ファミリーグループ内で、ギガホなどのプランを契約している回線が2つあると550円割引、3回線以上だと1100円が割引になるもの。ahamo回線ではこの割引が受けられないが、仮に1100円の割引がなくなっても、お釣りが出るくらいahamoは安い。
家族への影響も限定的だ。ahamo回線自体は割引対象外だが、「回線数のカウント対象」にはなる。つまり、自分は割引を受けられなくても、「2回線や3回線」の1つとしてカウントされる。自分が抜けたからといって、一般のプランを使っている家族の割引サービスが減るわけではないのだ。
また、ahamoは「ドコモ光セット割」も対象外となる。ドコモ光を使っている人は損しそうな気もするが、ドコモ光セット割分の割引がなくなっても、まだahamoは安い。
さらに、もしahamoとドコモ光を併用する場合、家族の誰かがギガホ系のプラン(5Gギガホ・5Gギガライト・ギガホ・ギガライトなど)を使っていると、「ドコモ光セット割」の対象となる。筆者の場合でイメージすると、すでにドコモ光を契約しているため、現状の段階で毎月セット割を受けている。ahamoに移行するとこの割引はなくなるが、母親がギガライト(1GB超)を利用しているので、母が割引を受けることができる。
自分発信で5分以上の電話をかける人は注意が必要だが、「家族への影響」はこのように限定的なのだ。
菅政権“肝いり政策”だけに、本気の値下げ
自分が本当にお得になるかどうかは、My docomoから「しっかり料金シュミレーション」をやってみるといい。「基本料金+音声オプション-割引サービス」から算出した金額が、ahamoより高ければ移行したほうがお得だ。ちなみに、ahamoは2700円(税抜)となっているが、現在の筆者のプランは以下のようになっている。
月々サポートは4月に終わってしまうので、5月以降は5880円になる。このプランは古いので、多くの人が使っているであろうギガホで同じようなプランを再現してみると、以下のようになる。
ただし、ギガホ割が適用されるのは6カ月間。7か月以降は5750円になるため、やはりahamoにしたほうがお得だ。
菅首相が官房長官時代に「高すぎる携帯電話料金」を問題視し、ドコモなどのキャリアは対応したように見えた。ところが、蓋を開けて見ると、ごくごくわずかの限られたユーザーしか恩恵が受けられないプランであった。
しかし、今回は本気の値下げだ。ahamoは「若者向けサービス」として打ち出されている。高齢者はなかなか低価格プランの恩恵を受けるのは難しいかもしれないが、ビジネスパーソンや学生であればかなりの人が安くなるはず。携帯電話料金が家計に占める割合は少なくない。お得な料金プランを使わない手はない。
(文=加藤純平/ライター)