東京都や神奈川県の一部で、楽天モバイルのスマホが突然、「圏外」になる――。そんな報告がインターネット上で次々にあがっている。これに先立ち楽天モバイルの自社回線エリア外でau回線を提供しているKDDIは「10月以降、東京都、大阪府、奈良県の一部でau回線の提供を順次終了していく」という通知を出していた。いったい何が起こっているのか。
川崎駅の改札内で楽天スマホが「圏外」に
11月5日、インターネット上では川崎駅の改札内で楽天モバイルのスマートフォンが圏外になるとの情報が駆け巡っていた。
JR東日本によると、川崎駅の1日平均の乗降客数は21万5234人で、同社管内の駅では乗降客数ランキング11位(2019年度)。東京都外では言え、首都圏の交通上、重要なハブ駅だ。同様の報告は、東京都下の自治体に居住するユーザーからも寄せられ、楽天モバイルユーザーの間に不安が広がった。
これに関し、KDDIは「楽天モバイル株式会社サービスへのローミング提供をご利用されるお客さまへ」との通知を公表していた。以下、引用する。
「東京23区、名古屋市、大阪市および局所的なトラヒック混雑エリアを除く全国エリア 地下鉄、地下街、トンネル、屋内施設や観光名所等の一部
但し、都道府県毎に楽天モバイル株式会社の自前エリアの人口カバー率70%を上回った時点で両社の協議を以て、各都道府県のローミング提供の継続・終了を決定します」
「2020年10月以降に順次終了する都道府県 東京都の一部、大阪府の一部、奈良県の一部東京都については2021年3月末に原則終了」
新型コロナウイルス感染症の影響で自社エリアの整備に遅れ?
KDDI関係者は次のように話す。
「そもそも楽天さんとの事前の取り決めに則って、協議し回線の提供を終了しています。人口カバー率ベースなので、どうしても都区内と都下など、人口が多い中心部と周辺部にムラは出てしまうこともあるとは思いますが、そこは楽天さんが基地局などの整備を進めカバーするという話でした」
つまり、楽天のエリア整備が追い付かないものの、当初の予定通りau回線の提供が終了しているということのようだ。一方、楽天ホールディングス関係者は次のように話す。
「実際、新型コロナウイルス感染症の感染者増加で、昨年度の計画通りに基地局の整備を進めることは難しい状況になっていると聞きます。まず、作業員が確保できない。また、新規設置交渉も、コロナ禍での各種対策を行わなければならず、スピーディーに進めません。
その結果、現時点で大半が終わっていなければならないはずの東京都内の自社回線エリアの整備が完了しないまま、人口カバー率だけは達成できてしまいau回線の提供が終了することになっているようです」
「つながらないスマホ」の印象は長期的な大ダメージに
楽天モバイルの「拡大予定エリア」によれば、2021年春以降の時点でも調布市、府中市、日野市、東村山市などはau回線のままで、順次、圏外になる可能性は高い。ITジャーナリストの三上洋氏は今回の問題を次のように指摘する。
「MMD研究所の満足度調査によれば、楽天モバイルの顧客満足度は大手3社を抑えてトップ。1年間無料であるためです。auのデータ通信も5GBまで使え、容量をオーバーしてもYouTubeを見るくらいなら支障はなく、実質、『使い放題』的な満足度の高いサービスです。
しかし、それだけ満足度の高いサービスのはずなのに、ユーザー数は100万人を超えてから現在まで、『200万人突破』の発表はいまだにありません。現在、使用しているユーザーも無料だから使っている方も多く、これが来年以降月額2980円になればどうなるかは未知数です。
またこれは楽天のみならず、他の携帯キャリアにも言えることですが、日本ではiPhoneが製品のラインナップにあるか、気軽に行ける店があるかの2点がとても重要です。ところが、楽天はこの二つがなく、ユーザー数の増加を足踏みさせている可能性があります。日本ではどれほど利用料金が下がることになっても、インターネット上でスマートフォン本体を購入し、SIMフリーを使うというカルチャーが根付いていないからです。
私は神奈川県と都内を行き来していますが、現状、圏外になったことはありません。しかし、首都圏のハブ駅のひとつ川崎駅が圏外になったというのはかなり致命的です。楽天、KDDIどちらかが切ったのかはわかりませんが、楽天にしてみればauに回線料利用料を支払うのは大きな負担ですし、au側も楽天に『無料で使い放題』のように利用されることに抵抗感はあると思います。
いずれにせよ、このタイミングで『つながらないスマホ』というイメージをユーザーに与えてしまうことは、楽天にとって長期的なダメージになると思います。ユーザーにとって『つながる』ことは当たり前のことなので記憶に残りませんが、『つながらない』場合は強く記憶に残るからです」
数々のトラブルを超え、サービス開始をした楽天モバイルだったが、本当の正念場はこれからなのかもしれない。
(文=編集部)