楽天モバイルは6日、スマートフォンを分割払いで購入した一部のユーザーに対し、一括払いで販売してしまうシステムトラブルがあったことを明らかにした。「原因はクレジットカード決済を行うシステムの不具合」とみられるという。
当サイトの取材に対し、同社広報部の担当者は「対象となるお客様には9月上旬より順次メールにて弊社対応についてご案内させていただいております。この度は、弊社のシステム不具合により、お客様にご迷惑をお掛けしましたことを、お詫び申し上げます」と回答した。
被害実態に関し一部報道では、「スマートフォン2台を月々およそ8000円の分割払いで買ったのに、20万円の一括請求が来た」「支払いができず、クレジットカードの信用情報に傷がついた」など、被害にあったユーザーの声が伝えられている。
楽天モバイルは4月、携帯事業のサービス提供を正式に開始した。サービス提供に至るまで、基地局の設置が進まず計画に大きな遅延が発生した。サービス開始後の7月17日には、「サービスの一時停止」をほのめかすような通知を出し、即座にユーザーサポートページで「メンテナンスのお知らせがございましたが、本日のメンテナンスおよびサービス停止の予定はございません」と火消しに追われるなど 、トラブルが絶えない。スマホ評論家の新田ヒカル氏は次のように語る。
「今回と同様の事例はあまり聞いたことがありません。そもそも通信という産業はインフラ業です。ガス、水道、電力、鉄道の業態がそのイメージに最も近いです。どれも生活基盤を支えるものであって、そのサービス内容も日々革新されるというものよりも、安定的に供給されることが重視されます。
つまるところ通信サービスというのはベンチャー企業とはあまり相性が良くありません。ベンチャーが安定性よりスピード感を重視しているのに対し、インフラ業界はスピード感より安定性を求められるからです。
一方、ベンチャーもある程度の企業規模まで大きくなるとインフラに手を伸ばし、安定的な収益を得ることを目指す傾向があります。
今では盤石な通信インフラ業としてしられるソフトバンクも、ヤフーBBなどを用いたADSL回線ビジネスを大規模に展開したころは、今の楽天以上に問題だらけでした。
ベンチャーがインフラに打って出る時、今回のことのようになるのは最初からわかっていたことかなと個人的には思っています。楽天は、ノウハウも人材もなく、通信インフラをいちからくみ上げるという経験もありませんでした。しかし、相当焦って進めようとしたところで、無理が出ているのかもしれません。
だからといって、今回の不具合が許されるわけではありません。とにかく楽天には時間をかけてインフラ業に慣れていってもらうしかありません。またユーザーの側も、もし楽天モバイルを使うのであれば、今後、こういうリスクがあることは想定した上で利用して行かざるをえないかなと思います」
楽天モバイルで今回のようなトラブルが頻発している背景について、同社関係者はいう。
「7月のサービス停止の誤通知の一件は、最悪携帯電話サービスの免許取り消しにもつながりかねない、相当やばいトラブルだと総務省から問題視されたという話は、社内でも伝わっています。今回の誤請求の件しかり、あり得ない失態が続いているのは、いまだに社内の体制や部署間の連携が混乱しているのが原因です。
そもそも楽天モバイルは三木谷浩史社長の鶴の一声で携帯事業参入が決まり、楽天本体やグループ会社から社員を寄せ集めて急ごしらえでつくられた。大半の社員は携帯ビジネスの素人なので、社内の人間なら誰しも危うさを感じていると思いますよ」
また、別のキャリア関係者はいう。
「一番問題だと感じるのは、数十万円規模の料金請求ミスを起こしておきながら、いまだに会社のHPなどで注意喚起のリリースを出していない点です。通常であれば、トップページの一番上に大きく掲載すべきレベルのトラブルですが、この危機意識の低さはちょっと信じられません。また問題を起こして総務省に睨まれるとマズいと考えているからなのか、“大ごとにしたくない”“隠したい”という意図を感じます」
菅義偉首相の意向を受け、大手キャリアの携帯料金大幅引き下げも見込まれるが、楽天モバイルにはますます苦境に立たされているといえよう。
(文=編集部)