携帯電話会社の楽天モバイルは8日、公式サイトでiPhoneなどアップル社製品向けアプリのダウンロードサービス「App Store」で、無料電話などが使える自社アプリ「Rakuten Link」の提供開始を明らかにした。同サイト上の対応機種には「【iOS版】iOS 13以降を搭載したiPhoneXS、XR、11(2020年7月8日時点)」との記載が加わった。事実上の楽天回線のiPhoneへの本格対応開始となり、日本国内のユーザーの選択肢が大きく広がる可能性が出てきた。
iPhoneユーザーの取り込み本格化へ
楽天の三木谷浩史社長は、携帯電話事業サービスのコアは「Rakuten Link」であることを強調していた。同アプリをダウンロードし、SIMカードを入れ替えるだけで楽天カードの会員情報を活用したさまざまなサービスや無料通話、無料メッセージサービスが利用できるということが売りだった。そうした同社サービスの最大の懸案は、回線対応製品がすべてAndroid端末で、iPhoneの「iOS」は「Rakuten Link」に対応していないことだった。
実際にはiPhoneの一部機種で限られた機能は使えたものの、動作保証の対象外で、楽天モバイルでは使用マニュアルなどを公開していなかった。
楽天モバイルは、4月のサービス正式開始から、楽天回線エリア内のデータ通信と「Rakuten Link」による国内電話が無制限のプラン「Rakuten UN-LIMIT(アンリミット)」を、開通日から1年間無料で利用できるサービスを展開している。6月30日現在の契約数100万回線を超えたが、NTTドコモ、ソフトバンク、auのシェアを奪うまでには至っていない。今回の仕様変更で、国内iPhoneユーザーの取り込みに新たな活路を見出すことになる。
スマホ評論家の新田ヒカル氏に今回の新サービスをどう利活用するべきなのかを聞いた。
新田氏の解説
国内のスマホシェアの約4割がiPhoneということもあり、とてもインパクトがあると思っています。
私も「Rakuten UN-LIMIT」に契約し、「Rakuten Link」を使用してみましたが、通話、データ通信双方ともこれまで文句なしの品質です。データ通信では首都圏や関西圏などの楽天サービスエリアと、それ以外の地方のauエリアで差が出るのではとの懸念もありました。しかし、エリアが異なっても充分な速度を保っています。正午から午後1時の混み合う時間帯でも多少遅くなりますが、高解像の動画を見るなどせずにネットサーフィンする程度であれば、問題はないように感じました。
穴があるとすれば、電話をする際、まれに楽天ログインが必要になることが生じることでしょうか。一定期間、同アプリを起動していないとログイン画面が開いてしまい、パスワードやIDを打ち込むのが面倒で、思わず普通の通話を使ってしまうことがありました。
またSMSの認証が楽天エリア内でないとできないという問題もあります。それでもおおむね満足できています。
スマホに詳しいユーザーの間では「iPhone 11pro」や「iPhoneXS」などの最新機種で動作することは認識されていました。しかし、楽天モバイルは「動作保証の対象外で、設定や操作方法などの質問には対応できない」という立場でした。対応機種がわからず、立ち上げ方法や操作方法に関する説明がなく、一般のユーザーの方が導入するのには不安がありましたが、今回の正式公表でそれも払拭されました。
今後、スマホを2台利用しているユーザーにとっては、かなり活用の幅が広がるのではないかと思います。9月にはiPhoneの新機種の発表が予定されています。例えば現在、iPhoneXSを利用しているユーザーは新機種をメーン端末として使用し、サブ端末として手もとに残ったXSに楽天モバイルのSIMを差し込んで使えばかなり利用料が抑えられます。
またそのサブ端末をデザリング専用端末として利用する価値もあります。結果としてメーン端末のデータ通信の負荷や速度も軽減できますし、既存のWiMAX契約が不要になるかもしれません
(文=編集部、協力=新田ヒカル/スマホ評論家)