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PayPayと楽天モバイル、黒字化の共通要因は「泥臭いドブ板営業」だった

文=Business Journal編集部
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PayPayの公式サイトより

 キャッシュレス決済サービスを手掛けるPayPayが、四半期ベースで初の黒字化を達成した。楽天モバイルも黒字化が目前に迫りつつあると宣言しているが、先進的なIT企業である両者の成功の大きな要因の一つが、昔ながらの泥臭い“ドブ板営業”だともいわれている。地道な対面での営業活動の重要性について、業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 PayPay(現ソフトバンク子会社)がサービスを開始したのは2018年。昨年10月にはサービス開始からわずか5年で登録ユーザが6000万人を突破し、24年6月現在は約6400万人となっており、キャッシュレス決済サービスとしてはトップの座についている。これまでPayPayは業界トップの座を固めることを優先し、競合サービスへの対抗策として100億円還元キャンペーンなどを大々的に展開するなど投資を優先してきたこともあり、設立以来、赤字が続いていた。

 だが、このほど親会社のソフトバンクは、24年度第1四半期決算でPayPayの営業利益が四半期ベースで初めて黒字に転換し、PayPayとPayPayカードを含むファイナンス事業は売上高が前年同期比20%増の631億円、営業利益が同75億円改善の57億円で黒字に転換したと発表。PayPayの上場も視野に入ってきた。

楽天モバイル、黒字化が目前

 同じく黒字転換で注目されているのが楽天モバイルだ。2020年に正式サービスを開始して以降、低価格かつシンプルな料金プランを武器に契約回線数を増やし、昨年以降は「Rakuten最強プラン」(昨年6月提供開始)、「最強家族プログラム」(今年2月)、「最強こどもプログラム」(6月)を相次いで投入し、さらには6月には「プラチナバンド」と呼ばれる700MHz帯の商用サービスも開始となり、速いスピードで契約回線数が増加。昨年8月には400万回線台だったが、今年4~6月の3カ月間の純増契約数は過去最大数となり、今月1日には750万回線弱にまで伸びていると公表された。

 楽天グループ(G)の携帯電話事業が属するモバイルセグメントはこれまで赤字が続いていたが、契約回線数の増加を受けEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の赤字は改善が進んでおり、楽天Gは5月、黒字化が目前に迫っていると説明した。

大規模な“ドブ板営業”

 キャッシュレス決済サービスと携帯電話という先進的なITサービスだが、両者に共通する成功要因の一つが意外にも“ドブ板営業”であるとの見方も多い。PayPayのサービス開始当初の活動について大手キャリア関係者はいう。

「ソフトバンクは数千人におよぶ営業担当者を投入し、個人経営の店も含めて全国津々浦々の小規模な小売店や飲食店などに一軒一軒、飛び込み営業をかけていった。当初は店側の手数料は無料に設定していたので、加盟店はうなぎ上りに増えていった。数年たって加盟店数と登録ユーザ数が一定レベルに達して知名度が高まったところで、それを活かして今度は全国規模のチェーン本部やプラットフォーム企業に営業をかけていった。そして現在では、ユーザの購買データを利用して、囲い込んだ加盟店や企業に対してクーポン利用などの提案を行い、付加価値の部分でも稼ごうとしている」

 一方、楽天モバイルについて別の大手キャリア関係者はいう。

「サービス開始当初はとにかく基地局を増やすことが最重要課題だったため、楽天G内の各社から営業をやっていた社員などをかき集めて、携帯事業のずぶの素人だった社員たちを短期間で教育して、基地局を置かせてくれる場所を開拓していった。その結果、開始からわずか2年で人口カバー率98%を達成した。

 また、契約回線獲得の面では、楽天市場をはじめ楽天Gが手掛けるサービスに加盟する法人に積極的に営業攻勢をかけ、三木谷浩史社長も自らトップ営業をかけたりと、まさにドブ板営業を展開している」

営業重視戦略の背景

 こうした両者の営業重視戦略の背景には何があるのか。長くIT業界を取材するメディア関係者はいう。

「かつてソフトバンクグループ(当時は日本ソフトバンク)の孫正義社長はADSLサービスに参入して『Yahoo! BB』を手掛けた際、大量の人員を投下して街中で通信機器を無料で配布するというローラー戦術を展開し、大成功を収めた。また、楽天Gの三木谷社長は創業当初、楽天市場の加盟店を獲得するために自ら毎日何十軒もの飛び込み営業をやり、国内トップのECモールにまで成長させた。孫さんも三木谷さんも“ドブ板営業”の重要性を強く認識している。

 ちなみに先月に上場したタイミーも約1000人いる社員のうち半数以上は営業担当者であり、強いIT企業というのは意外にも泥臭い営業を重視しているものだ」

(文=Business Journal編集部)

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