――日本の対応に反発するかたちで、韓国は日本とのGSOMIAを破棄しました。
裵 文在寅政権の「目には目を」といった報復的な対応には納得できません。今、日韓関係を語る上で「戦後最悪」という枕詞がついていますが、この状況を招いた責任は両国の指導者と政治家にあります。
そして、何より残念なのは青少年などの民間交流が延期や中止に追い込まれていることです。政治と民間交流は分けて考えなければなりません。韓国で起きている日本製品の不買運動なども、それにより日韓の民間人に影響が出ているとすれば、子どもじみた行動だと指摘せざるを得ません。日韓関係の悪化を見て、日韓離間を企図する北朝鮮は高笑いしているでしょう。
日韓は隣国ですから、お互いに引っ越すわけにはいきません。過去の歴史問題があったとしても、未来志向で冷静に向き合わなくてはなりません。そのためにも日韓パートナーシップ宣言を尊重し、日韓シャトル外交を復活させ、文大統領は安倍首相と話し合うべきです。
「もはや私の愛した韓国ではない」
――日韓関係が悪化すると、在日コリアンは微妙な立場に立たされます。
裵 日本国内で韓国叩きが始まると、在日コリアンに火の粉が降りかかってきます。そのため、関係が改善されるまで待つしかないという消極的な姿勢にならざるを得ないこともあります。改善のためには民間交流が重要です。昨年、両国間で1000万人以上の往来がありましたが、そうした動きを冷え込ませるべきではありません。
――日本人に対して伝えたいメッセージはありますか。
裵 在日コリアンは韓国への帰属意識が強く政治的な立場も韓国側だと思われているかもしれませんが、それは誤解です。在日コリアンのなかにもさまざまな考えの人がいて、ひとくくりに見ることはできません。そして、韓国政府が間違っていると判断をすれば韓国民団は韓国政府に対して物申す、是々非々の立場にあります。
今の在日コリアンには、文大統領にシンパシーを寄せる人も反発する人もいます。私の知人には「文在寅の統治する韓国は、もはや私の愛した韓国ではない」ということで、日本に帰化した人もいます。同じような理由で帰化する人も増えているようです。