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【悪化する日韓関係】嫌韓を煽るメディアよ、頭を冷やせ…江川紹子の提言

文=江川紹子/ジャーナリスト
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2日に発売された「週刊ポスト」9月13日号(小学館)。抗議を受け、発行元の小学館は同日、「誤解を広めかねず、配慮に欠けていた」と謝罪を表明した。

 今の日韓関係をめぐる報道やインターネットでの発信を見ていて、メディアの堕落ぶりがつくづく情けない。

 たとえば、「週刊ポスト」(小学館)は「『嫌韓』ではなく『断韓』だ/やっかいな隣人にサヨウナラ/韓国なんて要らない」というヘイトを煽るような大見出しで、特集を組んだ。その中には「『10人に1人は治療が必要』――怒りを抑制できない『韓国人という病理』」といった、極めて差別的な記事も含まれている。

嫌韓を煽るメディアの“罪”


 オウム真理教事件などもあって、雑誌がよく売れていた1995年には94万9000部を売り上げ、週刊誌のトップランナーだった同誌が、その後凋落の一途をたどり、今や印刷部数で34万6591部(今年1~3月)。嫌韓ムードにでもなんにでも乗っかって、1部でも多く売り上げたい、ということなのだろうが、浅ましすぎる。

 テレビの情報番組は、韓国問題の扱い方にうんざりして、このところ極力見ないようにしていたが、いやでもネット等で情報は飛び込んでくる。なかでもとびきりひどかったのが、TBS系CBCテレビ(名古屋市)の情報番組『ゴゴスマ~GOGO!Smile!~』でのコメンテーター武田邦彦・中部大学特任教授の発言だった。

 観光でソウルを訪れていた日本人女性が、韓国人の男性に暴行を受けた事件を番組が取り上げた際、「路上で、日本人の女性観光客を、訪れた国の男性が襲うなんてのはね、こらあもう、世界で韓国しかありません」などと述べた。さらに、大阪で韓国人観光客が激減している話題でも、「日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行しなけりゃいかんからね」と言い放った。

 いずれも、司会者や共演者から「先生、言い過ぎ」などという反応はあったが、これは「言い過ぎ」などというレベルではない。

 当然、批判が巻き起こったが、CBCの反応は鈍かった。ようやく3日後、番組の中で「ヘイトや犯罪の助長を容認することはできません」として謝罪はしたが、武田氏の名前など、何を謝罪しているのかについて具体的な言及はなかった。

 加えて、コメンテーターとして出演したタレントの東国原英夫氏が、同じくコメント役の金慶珠(キム・キョンジュ)東海大教授に対し、「黙ってろ、お前は!」などと怒鳴る場面が問題となった。これも、司会者が「穏やかにいきましょう」などと東国原氏をなだめたが、同氏の罵倒はすぐにはおさまらなかった。

 こうした事態が相次ぐのは、日頃の同局の番組づくりについての姿勢から、この番組なら、こうした暴言や韓国人への侮辱的振る舞いは許される、と出演者が思っているからだろう。さらに、世の中に嫌韓の雰囲気が広がっていることもある。メディアに韓国に対する批判、非難があふれ、韓国人を見下した物言いや国交断絶を言い募るコメントまでまかり通る“空気”を読み、「今は韓国をボロカスに言う発言がウケル」と調子に乗って、こういう暴言などが飛び出すのではないか。

 韓国に対する差別的な発言では、関西テレビ(大阪市)のバラエティー番組『胸いっぱいサミット!』で、作家の岩井志麻子氏が慰安婦問題に関するスタジオトークのなかで、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言したことについて、つい最近、BPO(放送倫理・番組向上機構)が審議入りしたばかりだ。

 しかし、今のところBPOはなんのブレーキにもなっていないように見える。BPOは、今回の武田、東国原両氏の問題についても、早急に審議に入り、過剰な韓国叩きの風潮に対して、強い警告のメッセージを発するべきだ。

 差別的で品のない言葉で韓国を罵倒し、人々のヘイト感情を煽っている人たちや、それを世の中に拡散しているメディアは、自分たちが日本の品格をどれほど貶めているかを自覚してもらいたい。

 それに、現在のような状況は、韓国を罵倒して「スカッとする」人たちにとっては楽しいかもしれないが、多くの人たちにとっては何の利益にもならない。それどころか、観光業を初めとして、経済的にはマイナスの影響ばかりだ。

 少し頭を冷やして、なぜこれほどまでに関係がこじれるのかを分析したり、考えたりする機会を、メディアが提供することこそ必要だ。メディア自身が嫌韓を煽ってどうするつもりなのだろうか。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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