野党がひとつの党になる動きが急加速してきた。立憲民主党の枝野幸男代表が12月6日、衆参両院で統一会派を組む国民民主党の玉木雄一郎代表、社民党の又市征治党首、無所属の野田佳彦前首相に合流を呼びかけたのだ。
10月の臨時国会からスタートした統一会派は、「桜を見る会」や英語民間試験の導入が先送りされた「大学入試改革」などの問題で攻勢を強め、「野党の結束の成果」だとの声が上がる。国会閉会翌日の10日も東京・有楽町で野党合同の街頭演説を行ない、「桜疑惑は幕引きさせない」と気勢を挙げた。
枝野氏が野党結集を急ぐのは、年明けの通常国会での衆院解散もあり得るとみているから。小選挙区制の衆院選は、できる限り与党と1対1の構図に持ち込まなければ勝ち目はない。
「『永田町の数合わせには組しない』と言ってきた枝野さんが、ここへきて自ら野党結集の旗を振りだした。どうやら党首連中はその気らしいが、立憲民主も国民民主も内部は個人の思惑ばかりで不満が充満している。選挙基盤の弱い人ほど、再び当選できるのかどうかがキモ。みんな自分のことしか考えていないんですよ」(野党関係者)
ただでさえ、立憲民主と国民民主には、2017年の前回衆院選で旧民進党が分裂した時のシコリが残っている。今夏の参院選で直接対決した参院議員はなおさらだ。報道では、そうした“近親憎悪”が合流の障害だと伝えられているが、野党関係者が言うように、問題はそれだけじゃないようだ。
ひとつの党になる場合は、当然、選挙区の候補者調整が必要になる。野党内では内々に「現職優先」が申し合わされているものの、立憲民主も国民民主も新人を積極的に擁立中。候補予定者が競合している選挙区は少なくなく、調整が難航するのは必至だ。
相変わらず内向き思考の野党
そして選挙区での調整以上にネックなのが、比例ブロックでの復活枠の問題だという。
「選挙区と比例代表の重複立候補者を対象にした『比例復活』は、選挙区で敗れた人を、東京や北関東といった全国11あるブロックごとに惜敗率(最多得票者の票数に対する割合)の高い順番で救済し、復活当選させるものです。現状、立憲民主のほうが政党支持率が高いので、比例の獲得議席数は国民民主より多くなるでしょう。つまり、ひとつの党になったら、立憲民主は国民民主に比例復活枠が奪われる。特に立憲民主には選挙に弱い人が多く、惜敗率だと国民民主の人が上位になってしまいかねません」(野党関係者)
国民民主の若手・中堅の衆院議員が立憲民主への合流推進を党幹部に申し入れるなど前のめりなのも、政権奪取という大局観に立ったものではなく、「比例復活枠が目的」だと囁かれている。
安倍首相は12月9日の国会閉会後の記者会見で解散について聞かれ、「国民の信を問うべき時が来たと考えれば、断行することに躊躇はない」と含みを持たせ、野党を挑発してみせた。戦う相手は与党だというのに、最初から勝てないと諦め、少ないパイの奪い合いをする内向き思考の野党。
「安倍政権はダメだけど、野党にも期待できない」という消極的安倍内閣支持者が減らないわけである。
(文=編集部)