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菅義偉“新首相”、陰湿な恐怖政治の始まり…異論は絶対許さず、官僚を容赦なく左遷・更迭

文=編集部
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菅義偉官房長官のインスタグラムより

 自民党総裁選に勝利し、9月16日の国会の首班指名選挙で新首相への就任を確実なものとした菅義偉官房長官。その冷酷な本性が、いよいよ剥き出しになってきた。

 総裁選投票に先立つ13日、フジテレビの番組に出演した菅氏は官僚の人事について次のように話し、政府の方針に反対する官僚は飛ばすと明言したのだ。

「私ども(政治家は)選挙で選ばれている。何をやるという方向を決定したのに、反対するのであれば異動してもらう」

 その後に出演したNHK番組で菅氏は、総裁選で戦っている石破茂元幹事長が「政府、官僚は国民のためにあり、権力のためにあるのではない」と発言するのを、苦々しい表情で聞いていた。

 政府に楯突くなら異動――。総裁選期間中、面白味がまったくないほど慎重な発言に終始した菅氏が、官僚人事については本音を露わにしたのは、元総務省官僚の告発があったからだと見られる。立教大特任教授の平嶋彰英氏は、総務省の自治税務局長だった2014年、菅氏の肝入り政策である「ふるさと納税」の制度改正にあたって異論を挟んだ結果、自治大学校長という異例のポストに左遷された人物。

 その平嶋氏が、自身の異動の経緯を含め、首相官邸の官僚人事について語ったインタビューが、12日付の朝日新聞に掲載されたのだ。それによれば、官房長官の菅氏が、総務省に対し、ふるさと納税の自治体への寄付額の上限倍増などを指示した際、平嶋氏は返礼品の高額化や自治体間の競争過熱を懸念して、一定の歯止めをかける提案をしたという。平嶋氏の提案は却下され、その8カ月後に「異例人事」が行われた。

 平嶋氏は「だから、いまの霞が関はすっかり委縮している」「官邸が進めようとしている政策の問題点を指摘すれば、『人事で飛ばされる』と役人は恐怖を感じている」と官邸による官僚支配の実態を語っていた。菅氏は、平嶋氏のこのインタビューを知り、改めて霞が関への睨みを利かせた、ということなのだろう。

小池百合子知事や玉城デニー知事との因縁

「内閣人事局」の制度をつくった安倍政権で、官僚人事を実質的に仕切ってきたのは官房長官の菅氏だ。平嶋氏の件以外にも、霞が関で広く知れ渡った官邸主導人事がいくつもある。

 例えば16年9月、宮内庁の風岡典之長官が予定より半年早く辞めさせられた人事。宮内庁幹部の異動は通例、春に行われ、風岡氏は70歳になる翌年の3月までというのが既定路線だった。ところが、官邸の意に反し、天皇の生前退位をめぐる「お気持ち」表明を止められなかったことへの報復として、風岡氏は更迭された。

「ムチ」の一方で、官邸の政策を推進する官僚には「アメ」を与える。農水省では16年、氏が力を入れていた農協解体を推進した奥原正明経営局長が事務次官に昇格し、農家を守る側に立った食料産業局長は退職させられ、その後任に経産省から官僚が送り込まれた。

 菅氏は気に入らない官僚には警察出身の官邸官僚を使って脅しもかけてきた。文部科学省の事務次官だった前川喜平氏が「出会い系バー」に出入りしていることを読売新聞が報じた一件がそのひとつ。前川氏がメディアで説明している話では、加計学園が国会で問題になっていた17年、文科省を辞めて1カ月経った頃のこと。杉田和博官房副長官から電話で忠告があった直後に、記事が出たという。加計問題で前川氏は「総理のご意向」文書の存在を明らかにし、安倍政権の「敵」となっていた。

「実は、菅氏の前川嫌いはそれ以前からで、文科省の天下りあっせん問題の責任を取って次官を退任した時から『あいつは許さない』と言っていた。周囲の官僚は、菅氏が感情的になり過ぎるのを見て、もう少し抑えたほうがいいのにとこぼしていた」(官邸関係者)

 確かに菅氏は、前川氏について聞かれた記者会見で、天下りあっせん問題で引責辞任した経緯に触れて、「地位に恋々としがみついていた」と人格攻撃とも思えるような言葉で前川氏を批判していた。退職してもなお、官邸に楯突く奴は許さない。前川氏への仕打ちを見て、現役官僚が震え上がったのは想像にかたくない。

「異論は絶対に許さない。菅氏のそうした姿勢のターゲットになったのは官僚だけではない。知事選をめぐって敵対してきた東京都の小池百合子知事しかり、米軍基地の辺野古移設に抵抗している沖縄県の玉城デニー知事しかり。コロナ対策で菅氏は『東京問題』と言って都知事を非難し、沖縄については無症状者などが療養する宿泊施設が逼迫したことを取り上げ、『政府から何回となく、確保を促してきた』と知事の不作為かのような言い方をした」(官邸関係者)

 総裁選の過程で、国家観のなさが浮き彫りになった菅氏だが、どんな国づくりを目指すかより、自分に従うかどうかのほうが重要なのだろう。官房長官の時は、菅氏の上に安倍首相がいた。だが、もう誰もいない。非情かつ陰湿な本性が、これまで以上に全面に押し出されることになる可能性が高い。

(文=編集部)

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