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人事を使った奇策
官僚が安倍政権に忖度するのは、内閣人事局などを通じて人事を握られていることが大きいが、横畠氏の“変節”も同様に人事が背景にある。
横畠氏は東大法学部卒業後に検事となり、地方検察庁と法務省刑事局とを行き来した後に、1993年、内閣法制局参事官に異動。一旦、法務省に戻るも、99年からは本格的に法制局で足場を固め、順調に昇進、2011年にはナンバー2の内閣法制次長に就いた。内閣法制局長官は内部で長年経験を積んだ者が上り詰めるのが慣例。横畠氏もいずれは長官とみられていたが、13年8月、安倍政権は霞が関が驚愕するサプライズ人事に踏み切る。
内閣法制局に一度も在籍したことのない外務省OBの小松一郎駐フランス大使を長官に抜擢したのだ。当時、集団的自衛権の行使容認を実現したい安倍首相が、行使容認積極派の小松氏を起用して、これまで法制局が違憲としてきた憲法解釈を見直させるための奇策だった。
その思惑通り、小松氏は集団的自衛権の行使容認への道筋をつけたものの、14年5月に末期がんのため長官を退任。後任人事が注目されたが、再びの外部起用はなく、慣例に戻って、横畠氏が次長から長官に昇格した。つまり、この時点で横畠氏は安倍首相の軍門に降ったといっていい。
横畠氏は小松氏の“意思”を継いで、解釈改憲により集団的自衛権の行使を容認した。「法の番人」から「内閣の番犬」となり、あらゆる内閣の方針にお墨付きを与え続けている。内閣法制局長官就任からまもなく5年。身体の隅々まで安倍首相の意向が染み渡っていることは疑いようもない。そうしなければ、いつでも簡単にクビが飛ぶだろうことを意識しているのだろう。
(文=編集部)
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