元農林水産大臣で弁護士の山田正彦氏が12月5日、自由報道協会で「種子法廃止の問題点」と題する記者会見を開いた。
戦後の日本の食と農を支えてきた主要農作物種子法の廃止法案が成立し、2018年3月31日で同法は廃止された。山田氏は、この問題についていち早く警鐘を鳴らしてきた。今年6月には『タネはどうなる?!―種子法廃止と種苗法運用で―』(サイゾー)を上梓し、7月には「日本の種子(たね)を守る会」の設立に力を尽くした。
「たとえば、種子法の廃止については、その背景事情のひとつにTPP協定に関する動向があったことは否定できないものの」
東京高裁は、日本がTPP協定に加わったことが種子法廃止につながったと認めているのだ。
TPP協定について、山田氏はもうひとつ興味深い指摘をしている。2016年、協定に署名した際、日米間で「保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡」が交わされた。この後段に、安倍晋三政権の方向性を裏付けるような記述がある。少々長くなるが、引用する。
「外国からの直接投資を促進し、並びに日本国の規制の枠組みの実効性及び透明性を高めることを目的として、外国投資家その他利害関係者から意見及び提言を求める。意見及び提言は、その実現可能性に関する関係省庁からの回答とともに、検討し、及び可能な場合には行動をとるため、定期的に規制改革会議に付託する。日本国政府は、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる」
つまり、外国や外国投資家の御用聞きのために日本は奔走しなければならない。政府は規制改革会議の単なる下請けのようだ。国権の最高機関・国会の出る幕はない。
種子法廃止で起きた“異変”
種子法に話を戻す。これまで同法が果たしてきた役割を、山田氏はこう語った。
「野菜の種子は30~40年前まで、伝統的な固定種(親から子、子から孫へと代々同じ形質が受け継がれている種。味や形が固定されたものが育つ)でした。ところが、今では海外で90%を生産。伝統的な固定種のほとんどが海外生産されている。『ホームセンターで売られている243の種子をすべて調べたところ、国内生産の種子は3つしかなかった』というような状況です。
かつては全部、100%国産だった。それが30年の間に海外生産となって、どう変わったか。F1(異なる親を交配させることで親とは違った新しい形質を持つ種子)になって、同時に種子の値段が上がった。たとえば、イチゴやトマトの種子はかつて1粒1~2円だったのが、今では40~50円です。どんどん高くなっている」
高価な種子を売りさばき、利益を得ているのは誰なのか。
「今、世界の種子市場は、モンサントを買収したバイエル、ダウ・デュポン、そして中国化工集団に買収された世界最大の農薬会社シンジェンタの3社にほぼ7割を握られています。日本の野菜の種子も、おおよそ押さえられたと言っていい」