消費増税対策の迷走が止まらない。
政府は11月22日、消費増税対策の基本方針を公表した。その目玉が「キャッシュレスレジ決済時のポイント還元を5%にする」というものだった。還元期間は、増税が始まる2019年10月から東京オリンピック開催前の20年6月までの9カ月間。
対象商品は税率10%の商品だけでなく、軽減税率(8%)の対象となる飲食料品も含まれ、対象事業者はキャッシュレス決済ができる中小小売店や中小飲食店など。コンビニエンスストアやファストフードなどのチェーン店では、個人が経営するフランチャイズ店は中小事業者なので還元対象だが、大手企業である本社が運営する直営店は対象外となる。つまり、個人経営のフランチャイズ店が混在する小売店や飲食店では、5%還元分の費用について、フランチャイズ店は国が負担するが、直営店は企業が負担してほしいというものだった。
しかし、「いくら大手企業の直営店とはいえ、9カ月間も5%の値引きを負担するのは厳しい」「5%も還元すると、買い物がコンビニや飲食チェーン店に集中する」という批判が高まった。そこで12月11日、コンビニや飲食店などのチェーン店は「5%ではなく2%の還元にする」という方針に変わった。
ただし、2%還元分の費用は、中小事業者であるフランチャイズ店は国が負担するが、大手事業者である直営店は国ではなく事業者が負担する。
この方式を採用すると、消費税率は、商品(飲食料品と非飲食料品)や売り方(テイクアウトかイートインか)、店の形態(中小事業者かチェーン店かそれ以外の大手か)によって、3%、5%、6%、8%、10%の5種類に分かれることになる(文末の表参照)。
しかも、チェーン店といっても、コンビニやファストフードのように、フランチャイズ店が多い形態と、ドラッグストア、家電量販店、ホームセンターのようにフランチャイズが少ない形態がある。
たとえ9カ月間でも、消費税率がこれだけ複雑になると、どの店が何%なのか、消費者にも事業者にも非常にわかりにくい制度になる。消費者の混乱を避けるために、どの店でも店頭やチラシなどに、その商品の消費税が何%なのかを大きく表示(告知)することになるだろう。しかし、それでも消費者にはわかりづらく、レジでの精算時やレジ後のレシートを見て、店側に問いただす顧客が増えるかもしれない。
それにしても、政府はいったい何をしたいのだろう。駆け込み需要とその反動減を極力回避するための増税対策のようだが、実際9カ月間は、増税と減税が混在する状況になる。深く考えもせずに、何か思いつきだけの政策にしか見えない。事業者や消費者に混乱を与える政策は、国民にとって迷惑だけでなんのメリットもない。この際、増税を延期して、もう一度時間をかけて、シンプルなわかりやすい制度設計にするべきだ。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)