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ヤマダ電機、過労自殺社員の遺族が提訴 週間残業47時間、精神障害を発症か

文=佐藤裕一/回答する記者団
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 開店が1週間後に迫ると、管理職全員が午前0時ごろまで残業する状況が生じていた。調査復命書には「管理職全員、極度の疲労状態にあったことがうかがわれる」と書かれている。

 実際に、15日のA氏の退社時間は翌16日の午前0時とされており、精神障害を発症したのも15日ごろと推定されている。A氏は自分が何をすればいいのかわからない状態に陥り、部下の問いかけにも答えられなくなり、やる気も感じられなくなったという。

 追い討ちをかけるようにトラブルも起きていた。16日の夕方から夜にかけて、A氏が中心となってDVDプレーヤーの山積みコーナーをつくっていた。ところが、完成間近になって、間違った商品を積み上げていたことが判明し、最初からつくり直すことになったという。

 このトラブルの影響もあって、A氏が退社したのは翌17日の午前2時だ。すでに心身の限界を超えていたが、フロア長が開店直前に休めるはずもなく、17日はそのまま午前7時54分に出社し、翌18日の午前1時まで働いた。

●死亡前1週間の残業は47時間30分

 さらに、17日と18日には、新店開設準備室の課長と部長代理が相次いで入店、部長代理から部門別の遅れに対して指摘があった。

 会社側の陳述によると、商品陳列は18日までにおおむね終わっており、19日には全社員で開店後のオペレーションを確認する予定になっていたという。

 A氏は18日も午前7時31分に出社。午後11時半に退社し、同僚と食事をしている。同僚の語りかけに、疲れた声で答えていたという。A氏が社宅で死亡したのは、その夜午前2時ごろ。赴任からわずか15日目、管理職になって35日目だった。遺書はなかった。

 A氏の死亡は、長岡労基署により11年6月、労災と認定された。調査復命書によれば、A氏の死亡前1カ月の残業時間は106時間21分に上る。特に忙しくなった開店直前の残業時間は、1週間で47時間30分に達し、赴任後は休みを取れなかったという。

●ヤマダ電機の反論(要旨)

 裁判でのヤマダ電機の反論のポイントは、おおよそ以下のとおり。

・9月5日以降、柏崎店の開店準備は応援の社員ら約200人がサポートしていた。柏崎店のスタッフが従事していたのは単純作業ばかりであり、本社社員の指示やマニュアルに従って作業するだけでよかった。そのため開店作業は困難ではなく、過密でもなく、高い負荷もなく、A氏が長時間労働を強いられた事実もない。

・A氏の健康状態に問題はなく、体調不良の訴えもなかった。「何をしていいのかわからない状態に陥っていた」というのも誤認で、戸惑っていたり悩んだりしていた様子もみられず、死亡直前もいつもと変わりがなかった。A氏が心身の健康を損ねていると考えた者はいなかった。

・16日の山積みコーナーのミスは予定外の商品を一部混ぜてしまった状況で、その商品は倉庫に戻して並べ直した。作業自体は30分程度で終わるような内容だった。

・労基署の調査には不足と偏りがあり、調査復命書の記載に事実誤認があるうえ、事実関係を正しく反映しておらず、労災認定の判断自体が誤りである。遺族の主張はすべて誤認に基づいており、事実を歪曲している。

 現在は審理係属中である。今後の裁判の経緯を見守りたい。
(文=佐藤裕一/回答する記者団)

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