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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

親の火災保険を今こそ見直しなさい!古い内容のままで火災、子供が破産の例も

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

家財の補償も要確認

 ほかにも親の火災保険でチェックすべき点は、家財の補償についてだ。火災の補償は、住宅の補償と家財の補償に分かれるが、「うちには大したものはないから」と家財補償を付けない高齢者も珍しくない。火災はもとより、ボヤであっても、類焼防止のために消火活動が行われるため、水浸しで使えなくなることがある。

 一般的な衣類一式、電化製品、生活雑貨、消耗品をゼロから揃えるとなると、ワンルーム暮らしでも総額で300万円くらいはかかる。50代以上の家財は、夫婦子供のいる家庭では平均1,500万円という保険関係者もいる。気になる家財保険の平均相場だが、契約内容や期間にもよるが、2年契約の家財補償1,000万円で年間保険料は1万円前後が相場だ。

 裏技というほどでもないが、家財の補償も各社では最低補償金額を設定しているため、費用を少しでも押さえたいなら、「最低補償金額はいくらで、その場合の保険料はいくらになりますか?」と一度聞いてみるといい。余談だが、よくあるのが一人暮らしワンルーム賃貸の家財補償に1,000万円とか2,000万円の補償額を設定しているケースだ。一人暮らしの人が家財補償を見直し、保険料が数千円安くなった例もある。逆に、4人家族でも家財の補償額を500万円にしている場合もある。これでは火災が発生した場合、よほど貯金に余裕がなければ家族の家財一式をそろえるのは大変になる。

 いずれにせよ、最低補償に設定して実際に火災に遭った場合、足りなかったということがないように建物や家財の適正額の設定にはくれぐれも注意していただきたい。

 火災に特化したオプションは、「類焼損害補償特約」「失火見舞費用保険金」「残存物取片づけ費用保険金」「臨時費用保険金」などがあるが、高齢者はどこまで内容を理解しているのだろうか。

「類焼損害補償特約」では、ご自身の住居の失火が原因で近隣の住宅・家財に延焼した場合、損害に遭った住宅や家財の損害に対して保険金が支払われる。この場合の保険金は、再調達価格が支払われるが、損害に対して支払われるべきほかの保険金がある場合、その保険金を差し引いて支払われることは注意したい。

「失火見舞費用保険金」は、類焼させてしまった近隣の住宅・家財に支払う見舞金等の費用だ。自宅が火災に遭い、ホテル住まいなどを余儀なくされる場合の臨時の出費に備えるのが「臨時費用保険金」で、「残存物取り片付け費用保険金」は取り壊し費用、片付け・清掃費用および搬出費用の発生に対して、実際にかかった費用が支払われる。

 商品によっては、最初からセットされていたり、オプションだったりと異なる。高齢者に提案・契約する際には親族の同席を必要としているが、契約のゴールは決めたので、オプションの説明は聞き流す高齢者がいて、後で「聞いた・聞いていない」問題が発生することも多い。オプションの内容の見直しも確認しておきたいもの。

 ところで、高齢者に多い火災保険への最大の誤解が、火災保険は火災しか補償されないというものだ。火災保険の補償対象は、火災以外に「落雷、破裂・爆発」「風災、雹(ひょう)災、雪災」「水濡れ、物体の落下・飛来、騒擾(じょう)等」「盗難」「水災」といった具合に広範囲にわたる。思い込みで請求漏れのないように、これも要チェックだ。

 親の生命保険の内容はチェックしても火災保険の内容まで把握している子供は少ない。高齢者の子供は年齢的に住宅ローンや教育資金に出費が増え、中には役職定年で給与がダウンする人もいる。万が一、親が火災を起こしたり、巻き込まれたとしても、手続きはもとより、補償内容に不足があれば、子どもに経済的負担を強いることになりかねない。子供やその家族、はては近隣住民の人生を大きく狂わせてしまう場合もある。

 先日、こんな話を聞いた。近隣住民が親の様子を見に来た子供を訪ねてきて「火災を起こされると困る。火災を起こされても火元から補償されないと聞いたけど、近隣に見舞金が出る火災保険はあると聞いた。お宅の火災保険はどんな内容なの?」と言われたという。その人は「慌てて親の火災保険証券を探し出し、近隣への見舞金も支払われる補償内容に見直をした。いつも『世話になって感謝している』と言ってくれていたけど、本音はうちの親が高齢になり不安を感じ始めたのだろう。ショックだったが、はっきり言ってもらって良かったのかもしれない」と話す。

 失火責任法では、近隣に対しては重大な過失がなければ賠償責任は負わないとされているが、近隣に類焼を及ぼす火災を起こした場合、その地に引き続き住めるかというと、そうではないのが現実だ。

「火災保険は不要」「もう火災保険は加入できない」と思い込んでいるかもしれない高齢者が多いだけに、火災保険の値上げが予定されている今こそ親の加入している火災保険の補償内容を見直す機会を親子で真剣に持っていただければと思う。

【親の火災保険、ここをチェック】

(1)火災保険の内容を親は把握しているか

(2)火災の補償は再調達価格か

(3)火災の補償は、建物は対象になっているか

(4)建物・家財の補償額は適正か

(5)オプションに過不足はないか

(6)火災以外にも補償されることを知っているか

(7)請求漏れはないか

(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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